第28回受賞作品 [ジュニアの部]

審査総評

木の素材を活かして、遊び心を感じさせてくれる作品をテーマに募集してきたウッドクラフト展。今回で28回を迎えましたが、大きな課題に直面していると思います。

 じつは応募総数が前回の125点から68点と大幅に減少したことです。昨年度の講評で彫刻家の磯尾隆司氏は、「木の枝をそのまま利用するなど、自然素材を活かした作品が姿を消し、機械を使った作品が多い。彫刻刀や、やすりを使った手作業的な作品が少ない」と指摘されましたが、今回も同様でした。残念ながらその要因は子供を取り巻く環境にあると思います。

 出展作品を見ると、高学年の学生は専門学校で木工作の道具が使えたり、低学年の子どもも、家庭に木工作の材料や指導者がいる子供たちが多いようです。

 本来、子供はモノを作ることが大好きです。しかし、身近に材料の木もなく、道具もないとなれば、プラモデルなど入手しやすいもので作り遊ぶのではないでしょうか。

 子供たちの身近に材料の木があり、モノを作る環境がないと、出品作品の応募は今後もますます厳しくなるのではないでしょうか。

日本玩具博物館 館長 井上 重義

グランプリ

作品名 / ハイジの牧場ひつじさん
氏名 / 浅見 有紀、五味 翔太、内山 堅心、千葉 治暉、黒滝 勇水、
皆川 一樹、細村 秋
(埼玉県立特別支援学校大宮ろう学園 高等部本科 1~3年生)

【作者コメント】
 3年生が北海道へ修学旅行に行った経験をもとに、木工の授業でひつじの牧場を作りました。

 一番苦労したところは、ノコギリを使って、堅い丸太を切ったことです。 慣れないノコギリの作業だったので、力を入れすぎて手が痛くなることもありました。 また、やすりで木の表面をきれいにする作業も長い時間やり続けるのが大変でした。一番楽しかったのは、ひつじの毛を貼る作業です。 短く切ったかんなくずを、ひつじの体に貼るとどんどんひつじっぽくなっていくので、とても楽しかったです。

 一人ひとりが1体ずつのひつじを一生懸命つくりあげ、それぞれの個性が表れる仕上がりになりました。

【講評】
 見つめた瞬間に、思わず頬が緩み微笑んで見つめてしまう作品ですね。
羊のもつ愛らしさや柔らかさ、丸みが伝わってきます。すべてが木の素材で出来ており、羊毛のモフモフ感をカンナくずという、どちらかというと捨ててしまう素材を使って優しく表現しています。また、木の種類によってカンナくずの色の違いを巧みに使い分けており考えの深さも感じられます。作品自体に可動部はありませんが、牧場の雰囲気がよく出ています。
三田市中学校美術科教諭 大前 勝彦

準グランプリ

作品名 / 森の音楽会
氏名 / 長谷川 楓(愛知県立起工業高等学校 2年生)

【作者コメント】
 まず木材で本格的に何かを作る事自体が初めてで、木を切る事も、釘を打つことも、 やすりをかけることも、何もかもが新鮮でした。
 危険な機械も多く、最初はとてもひやひやしたけど、使ううちに慣れて上手く使えるようになりました。きれいに形を切ることができた時はすごくうれしかったです。
 一番苦労した事は木琴の音階を合わせる事でした。 音階全て同じ木材で作らず、種類の違う木材を寄せ集めて作ったので、高さの合う木材を探すのが大変でした。細かい音の調節も削り過ぎてしまったりして何回も作り直しました。
 とても大変だったけどとても楽しかったです。

【講評】
 全体の構成を考え、それに基づく数多い部品を作り、それを一点づつ組み立てる。その過程を考えると気の遠くなるような時間と大変な労力を費やされたことでしょう。出品作品のなかでもひときわ目を引く作品でした。
 沢山ある部品の穴に軸を差し込み、ハンドルを回すと、森の音楽会がはじまります。 木琴を叩く美しい音色がひびき、軸を差し込む位置を変えれば音色が変わるのも楽く、着想も素晴らしいです。

日本玩具博物館 館長 井上 重義

準グランプリ

作品名 / 大和
氏名 / 松井 誠虎(丹波市立東小学校 3年生)

【作者コメント】
釘を打つのが難しかったけど、全部打てた。
木を機械で磨いたところが楽しかった。
細かいところもありましたが、少しずつ切ったり磨いたり組み立てたりと頑張りました。

【講評】
 非常に精巧に作られた完成度の高さが印象的です。大和は設計図なども残っており、そこから寸法なども取り出したのかな?と思える出来栄えです。

各部の大きさやバランスもよく大作になりましたね。このような作品の場合は完成時に着色して仕上げてみたいものですが、あえて着色をせず木地の雰囲気のまま完成させたところも好印象です。

三田市中学校美術科教諭 大前 勝彦

優秀賞

   丹波市長賞  とびたい!!  川中 咲(三田市立あかしあ台小学校 2年生)
   丹波市議会議長賞  ゆらゆらサボテン  井寺 のの子(愛知県立起工業高等学校 2年生)
   丹波市教育長賞  木のものがたり  細谷 広夢(東京都立工芸高等学校 3年生)

特別賞

  三木工業協同組合理事長賞 花札  北野 仁一朗(大阪市立工芸高等学校 3年生)

佳作

   丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  バランスきの子  相馬 侑花(東京都立工芸高等学校 3年生)
   丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  コロコロ☆  廣永 梨帆(徳島県立徳島科学技術高等学校 2年生)
   丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  おふねにいっぱいのせちゃおう!  大森 春菜

学校賞

  (公財)兵庫丹波の森協会理事長賞  IMAZUサファリパーク 西宮市立今津中学校

館長賞

  兵庫県立丹波年輪の里館長賞 跳び箱型物入れ  井上 桃華(神戸市立雲雀丘中学校 1年生)


出展校数:17校 / 出展作品数:68点


審査員

  【審査委員長】 日本玩具博物館 館長  井上 重義
    彫刻家  礒尾 隆司
    三田市中学校美術科教諭  大前 勝彦