第16回受賞作品 [一般の部]
審査総評
「木たちは、多くのことを語りかけてきます」
子供たちの心が荒んでいると聞きます。その原因がさまざまに言われていますが、一つ気になるのは、語彙が極めて少なくなったことです。言葉の意思伝達の道具ではなく、記号となってしまったのかも知れません。
私たちは、すでにたくさんの記号をかかえているというのに・・・。
今年からこのウッドクラフト展では、特定のテーマに沿った作品も募集することになりました。今回のテーマが「風」。応募者がこのテーマをどのように解釈してくれるか、私たち審査員も楽しみにしていたのは事実です。そしてその期待どおり、さまざまな表情をもつ作品が集まりました。風そのものを具象化した作品、風を「感じさせる」作品など、その自由な発想は、私たちをドキドキさせるものばかりだったように思います。そう、まさに豊富な語彙をみる思いでした。
作品たちは語りかけてきます。ときには訥々と、饒舌に。その一つひとつに耳を傾けてください。もし手を触れる機会があるなら、作品たちの鼓動を感じることができるはずです。
20世紀が時を凌駕する時代だったとすれば、21世紀は時と共存する時代です。木が生きてきた時間を、是非共有してみてください。
一般の部審査員 小田桐 充
(雑誌編集者)
グランプリ
作品名/ 風力こま
氏名 / 村井 中
【作者コメント】
ふいごの風で回るコマです。風の力を利用することによって容易に続けて回すことができるとともに、普通のコマと異なる変わった動きが得られます。
玉ころがりコマ(回転するコマの上で玉が逆向きに走ります。)
重ねコマ(互いに逆回りし、重なったパターンが変化して見えます。)
両回りコマ(風が強いと時計回り、弱いとその反対に回ります。)
虹コマ(羽根コマの反動で回り、上からは3色に、横からは虹色に見えます。)
UFOコマ(コマの軸が星形をなぞって動きます。)
笛コマ(笛のせんのはずし方で、音の高さが変化します。)
【講評】
村の鍛冶屋を思いださせるフイゴ、コンパクトな装置として生かしたこの作品は、木工本来の手作りの温かさと相まって、作者のやさしい気持ちが伝わってくる楽しいおもちゃに仕上がっている。遊び方にもバリエーションが用意されていて、フイゴの空気を又小さなフイゴの音に変えたり、星型のガイドラインに沿ってUFOが回転したり、色々と、楽しませてもらったが、あきることがなかった。こんなやさしい作品を作るのは、ピノキオを作ったジュゼッペ爺さんのような人かなと思ったら、経歴を見る限り想像通りの人のようでうれしくなった。
新宮 晋(造形作家)
準グランプリ
作品名 / Be careful!(用心して!)
氏名 / 福島 栄一
【作者コメント】
磁力はリニアモーターカーや核融合等、科学の最先端で利用されています。科学に興味が湧くよう、磁石をからくりに組み込みました。
【講評】
木と木に渡された丸棒の上を、一輪車に乗った男が行ったり来たりするからくり玩具、オートマタである。地面からモグラやミミズが顔をのぞかせる動きも見せる。 動かす装置に歯車とキャタピラを連動させ、磁石を使って人形を移動させた点、把手を同じ方向に回しつづけて、人形を前進後退させた点、こうした工夫が評価された。いくつかの樹種を使って美しく丈夫に作られてもいる。 舞台の上より奈落のからくり装置を見せる方に力点が置かれている。舞台の上のキャラクターに、もうひとつ想像力を掻き立てるものがあって欲しかった。磁力を使って新しい動きを見せるオートマタが、これから現れてくる可能性を感じさせる作品である。
小黒 三郎(組み木デザイナー)
優秀賞
柏原町長賞 へるすごーもん 塩谷 宗広
柏原町長賞 Pinochio II(ピノキオII) 材津 公二
柏原町長賞 風車の窓 加藤 伊佐夫
奨励賞
丹波の森協会理事長賞 ボクのコックピット 田中 陽三
兵庫県勤労福祉協会理事長賞 花ペラ 武知 広幸
兵庫県勤労福祉協会理事長賞 風のダンス 上原 雅子
アイディア賞
氷上町長賞 組み木 コロコロ 鎌田 伸一
青垣町長賞 風力 かたつむり 湯元 桂二
春日町長賞 和・とんぼ 平良 勇
山南町長賞 Spile(スパイル) 加藤 克俊
市島町長賞 TORT TURT(トータとタート) 小酒井 誓吾
特別賞
丹波の森 ウッドクラフト展実行委員長賞 海から届いた、森の音 山川 マサミ
丹波の森 ウッドクラフト展実行委員長賞 台風接近 加藤 清克
出展作品数は103点、出展数は94名
審査員
【審査委員長】組み木デザイナー 小黒 三郎
雑誌編集者 小田桐 充
彫刻家 新宮 晋
兵庫教育大学名誉教授 日野 永一
大阪教育大学教授 水上 喜行