第18回受賞作品 [ジュニアの部]

審査総評

生活意識とファンタジー

 丹波の森ウッドクラフト展は、人の心の優しさや温かさが失われがちな現代生活の中で、思わずほほえみ合ったり、空想世界に誘われてわくわくしてしまうような木の文化の創造をめざしています。さらにジュニアの部では、造形の美しさや個性的なテーマ性などを大切にするだけでなく、その作品と制作を通して家族や仲間がファンタジーを共有し、会話を楽しむ生活意識の反映を重視しています。

 それは今年の作者のコメントにも「思い出の校歌」、「私の友だちをモデルにした人形」、「親子の会話やお互いのことを考える時間」、「祖父にあげるつもりで祖父の歳の79をつけた汽車」、「洗面台の鏡に顔が届かない弟や妹のための小さな踏み台」などの言葉に端的に表れています。この生活感情を包み込んだユーモラスでファンタジックな造形が、私たちの気持ちを和ませてくれます。

 けれども量産品に囲まれた現実の多くの子どもたちは、木の文化と触れ合うことも創りだすこともいっそう難しくなり、心ある教師や指導者の苦労も深まりました。

 山梨県のある中学教師は教材費不足を校長の計らいで地域林業家の支援を受け、地元産材による工作を実現したとコメントしています。不便な交通事情から下校が早い山村で、しかもその学年の美術授業は体育のあとの1時間で計10時間の工作授業計画。それでもキット教材などに頼らずにさまざまな障害を克服しての作品応募でした。本物のウッドクラフトにチャレンジさせたいという教育観と情熱に頭が下がります。
ジュニアの部審査委員長 寺内 定夫
(玩具デザイナー)

グランプリ

作品名 / 木の楽譜 ―校歌―
氏名 / 亀岡市立 高田中学校3年生

【作者コメント】
 1年生の時から美術や技術の授業で「木」を素材にした作品をいろいろ作ってきました。また、毎年、文化祭でも「木」を使っての共同制作に取り組んできました。そんな僕たちも来年の春には中学校を卒業します。中学校3年間の様々な思い出と友達との絆を形に残そうと、今年はこの作品に取り組みました。

 一つ一つの音符は、みんなとの思い出・・・友達の笑顔です。それが並ぶとメロディーが生まれます。僕たちの中学校3年間の思い出を「校歌の楽譜」にのせて残したいと思い、この作品を作りました。音符を組み替えれば他の曲も作れるように工夫しました。

【講評】
 全体のまとまりや、高い技術が随所に感じられます。その中で、作品を通して一人一人のつくり手の表情や思いが、細やかに感じられます。完成までの間、木に触れる度に、様々な学校生活の思い出や、友達の顔が浮かんできたのではないでしょうか。その様な深い思いの中での作品には、自然と素晴らしいハーモニーが感じられます。
大前 勝彦(三田市中学校美術部会員)

準グランプリ

作品名 / ウォーターボーイズ3
氏名 / 西宮市立 今津中学校美術部

【作者コメント】
 映画やTVでヒットしたウォーターボーイズの「3(スリー)」版を制作しました。ハンドルをまわして動く作品は多いけれど、シンクロナイズドスウィミングのものは見たことがないので、一斉に動くと美しくておもしろいと思って作りました。

 授業(必修)で学習した糸のこの扱い方や選択授業で学習したオートマタのしくみを活用しました。

【講評】
 数年前、映画・テレビなどで話題になった「ウォーターボーイズ」を題材にして、学生のグループ製作にふさわしい作品だと思います。箱の外側の取っ手を回すことで、人形が上下に動いたり回転したりする仕組みですが、違う形のカムの組合せによって、同列の人形もさまざま違った動きをするよう工夫されています。人形劇のように、曲に合わせてうまく演技をしているところを見てみたいと思いました。テレビ番組「欽ちゃんの仮装大賞」を思い浮かべたのは私だけでしょうか。
礒尾 隆司(彫刻家)

準グランプリ

作品名 / ウェルカム キャミーちゃん
氏名 / 渡邉 舞子(姫路市立 花田小学校 5年)

【作者コメント】
 なぜ、この作品を作ろうと思ったかというと、昨年、木で顔つきのいすを作ったからです。だからそれに合った物を作ろうと思いました。一番むずかしかった所は、1本の細長い木に小さい木をつけた所です。伝えたいことは、みつあみの女の子は、わたしの友だちをモデルにしました。女の子の名前はキャミーちゃんです。

【講評】
 「こんにちは」。渡邉さんのお家にお友達がやってきた情景が目に浮かぶ楽しい作品です。

 身近に見つけた素材の特質をつかみ、作られています。顔に穴をあけて目や鼻を取り付けるところなどに大変な苦労があったのではないかと思います。荒削りな作品ですが構成力にも優れ、楽しんで作った状況がうかがえます。友達がモデルとのことですが共に入賞を喜んでくれたことでしょう。昨年に続いての入賞おめでとう。
井上 重義(日本玩具博物館長)

優秀賞

  丹波市長賞  wood mail  東京都立 工芸高等学校(3年)深谷 直美
  丹波市議長賞  12支の綱渡り  茅ヶ崎市立 円蔵中学校(3年)石井 貴
  丹波市教育委員会教育委員長賞  遊園地  篠山市立 今田小学校(5年)池田 諒

アイディア賞

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  森の動物たち  芦屋大学附属中学校(2年)工藤 宣江
  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  マーチングドール  三田市立 学園小学校(6年)三宅 悠介
  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  万年カレンダー  丹波市立 和田小学校(4年)由良 実生

奨励賞

  兵庫県芸術文化協会理事長賞  ちゃぶですく  東京都立 工芸高等学校(3年)山田 真紀
  財団法人丹波の森協会理事長賞  木関車C12  茅ヶ崎市立 円蔵中学校(2年)遠藤 勇及
  丹波の森ウッドクラフト展審査委員長賞  夢の虫  神戸市立鹿の子台小学校(6年)鴫田 捷仁
  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  森の観覧車  姫路市立 花田小学校(5年)福岡 舞

特別賞

  丹波の森ウッドクラフト展審査委員長賞  家みたいな体育館  北杜市立 泉中学校(3年)藤原 かおり
  財団法人丹波の森協会理事長賞  勉強机  茅ヶ崎市立 円蔵中学校(2年)高橋 和久

特別賞

  兵庫県勤労福祉協会理事長賞   茅ヶ崎市立 円蔵中学校


出展校数:25校、個人出展2名/出展作品数:323点


審査員

    【審査委員長】玩具デザイナー  寺内 定夫
    彫刻家  礒尾 隆司
    日本玩具博物館長  井上 重義
    三田市中学校美術部会員  大前 勝彦
    丹波市小学校図工研究部長  西山 かすみ