第19回受賞作品 [一般の部]

審査総評

「創作と評価が育てるコンクール」

 本展コンクールにはこれまでグランプリや、優秀、奨励、アイデア、スキル、キャラクター等の各賞が設けられていて、序列をつけるだけの審査ではなく、作品それぞれに授賞の観点の違いも示してきました。この第19回展はさらにいくつかの特別賞を加えることによっていろんな観点からより丹念に審査を行うようにしました。身近な人への暖かな眼差しを想わせる「ほのぼの賞」、木による表現の本質を究めようとする「ウッディー賞」、洒落やおかしさを表現のポイントにおく「ユーモア賞」の各賞を設け、ねらいの異なる表現の各々にも努めて評価の目を配り、出品者の誠意に応えるとともに、展覧会では鑑賞の一助になればと審査の基準を見直しました。
 新たな賞の要請は、回を重ね成熟に向かう本展コンクールには当然予測される向きでもありました。近年出展作品の表現が多彩になるにつれ多様な評価の観点が求められる情況が審査の場面にみられました。審査の評価が新たな作品に質の差異を生み、作品の差異が新たな評価を求め、つまり創作と評価が相乗しあうことによって本展コンクールは様々な表現価値を巾広く受けとめる体質をすでに獲得していたようです。コンクールの成長とともに新たにどんな賞が登場することになるか、更に今後に期待したいものです。

 コンクールとは、このように出品者と審査員のコラボレーションによってどこまでも成長するもののようです。丹波の森ウッドクラフト展は来年20周年を迎えます。充実した記念展になりますよう審査にあずかる私たちも緊張感を新たにして多くの皆さんの意欲作とのコラボレーションを心待ちしています。重ねて皆さんのご協力をお願いします。

大阪教育大学教授 水上 喜行

グランプリ

作品名 / カタカタつみき
氏名 / 濱田 昭文
使用樹種 / ブナ、セン、ホオ、ウォールナット

【作者コメント】
 昔ながらのおもちゃカタカタ人形をヒントにいろいろな形のつみきが動くように工夫しました。一つの台で形のちがうつみき数種が動きます。
 台の上方からつみきを落とすとカタカタ降りて積みあがります。

【講評】
 この「カタカタつみき」と名付けられた積み木は、日本においては「カタカタ人形」、欧米では「クラッター・チット(うるさい子ども)」と呼ばれるおもちゃである。板の上から人形(ひとがた)に切り抜かれた板を落すと、人形はカタカタと音を立てながら、その身体を左右に揺らしながら板の上を落下していく。単純きわまりない形体のおもちゃであるが、その「カタカタ人形」「クラッター・チット」という言葉に思考が限定されてか、従来のカタカタ人形のデザインは、人形、いわゆる具象的な形体に限定されていた。どの国、どのメーカーのものをとっても、滑り落ちる板は人形にデザインされていた。このグランプリを獲得した「カタカタつみき」は、円、三角、十字といった、いわゆる抽象形態をした板が滑り落ちてくるように作られている。このようなデザインの「カタカタ人形」を見るのは初めてであった。非常に斬新なデザインであるといえる。デザインも素晴らしいが、セン、ブナ、ホオ・・・といった樹種の選択もまた素晴らしいものであった。難を言えば、背面の板の長さが足りないように思われる。少なくとも、この三倍ほどの長さがあればよかったのではないか。

有馬玩具博物館 館長 西田 明夫

準グランプリ

作品名 / 渦巻く宇宙
氏名 / 横山 薫
使用樹種 / チーク、ベイヒバ、シカモア
ニヤトー、竹、ウオ-ルナット他

【作者コメント】
作品のねらい・・・宇宙の果て、渦巻く星雲を表現。
制作のポイント・・・積み木の安定、アームの成形、コマ等
特色・・・六角板で構成した櫓(やぐら)
(イ)なめし革を貼る。
(ロ)手回しで積み易く。
(ハ)センターポールで安定化
メッセージ・・・これからも伝承玩具に新しい試みを続けてゆきたい。

【講評】
 この作品は昔からある伝承玩具の独楽、弥次郎兵衛、積み木の三つの遊びを盛りこんで、幼児から大人まで組み立てを楽しめる構成玩具です。 今回のテーマ部門が「積む」であることから発想したのでしょう。太陽のような中心の独楽のまわりを、二本の竹製の弥次郎兵衛の腕がゆるりと回り、その腕の上で惑星のような四つの独楽を回転させるというアイデアは、まさに『渦巻く宇宙』です。
 樹種濃淡の変化美しく技術も巧み。作者はこのコンペに10回ほどもアイデア賞などを受賞し、ようやく準グランプリを手にしました。74歳にして創作への意欲と情熱はますます盛んのようで、頼もしいかぎりです。

組み木デザイナー 小黒 三郎

優秀賞

  丹波市長賞  組子スタンド 雪あかり  阿曽 一弘
  丹波市議長賞  ふしぎな楽器  大森 栄司
  丹波市教育委員会教育委員長賞  風の道  上平 美穂子

特別賞

  兵庫県芸術文化協会理事長賞  バビロン  松本 昌人
  財団法人丹波の森協会理事長賞  絡舞(からまい)  濱田 昭文

アイディア賞

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  組み木の・わくわく移動動物園  守重 シゲ子
  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  spt  加藤 克俊

奨励賞

  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  ドングリコロコロ  カナイ 実
  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  眼鏡橋  佐藤 敏男
  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  マイチェア(つくったよ)  松井 滋子

ほのぼの賞

  兵庫県芸術文化協会理事長賞  キッズキャッスルof半畳  薄井 徹

ユーモア賞

  財団法人丹波の森協会理事長賞  ton・zura(トン・ズラ)  澤田 智茂

スキル賞

  丹波の森 ウッドクラフト展  実行委員長賞 天(TEN)キューブ  河野 一郎

スキル賞

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  置時計「一番星とフクロウ」  武山 忠道

ウッディ賞

  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  チェアーマン  澤井 泉源

出展作品数は78点(内テーマ作品数は31点)、出展数は69名


審査員

【審査委員長】小黒 三郎 組み木デザイナー
小田桐 充  雑誌編集者
西田 明夫  有馬玩具博物館館長
日野 永一  兵庫教育大学名誉教授
水上 喜行  大阪教育大学教授