第20回受賞作品 [ジュニアの部]

審査総評

ウッドクラフトが内包するエネルギー

 子どもたちのノコギリやカナヅチの音、制作中の親子の会話や楽器を調律している音、虫や小鳥の鳴き声、そして森の香りや川のせせらぎにも包み込まれる感じになるのが、ウッドクラフト審査会場のうれしさです。
  いま、人が集まるときっと話題になるのが全国から報じられる子どもたちの悲しい出来事ですが、子どもたちのウッドクラフトに囲まれると、そのつらい気持ちからふと解放される思いがします。近ごろの子どもたちが人間関係につまずき悩む原因の一つとして、ゲームやメールなどの情報に時間を奪われ、手足を働かせるふだんの生活経験が激減しているとよく指摘されています。
 ところがウッドクラフト展に出品した子どもたちのコメントや作品をみると、自然環境や木材と出会っているだけでなく、親や先生の生活の知恵や技術を学び、友だちと支えあい励ましあっている様子が山ほど伝わってきます。人やものとの関係文化をしっかりと学習しているのです。たとえば入賞には至らなかったものの、ヒモを巧みに使った鳥小屋や漁師のおじいちゃんに教わったというヒモ結びなどに、継承されている生活文化が息づいています。
 自然の美しさをたっぷりと味わい、苦労を重ねてもの作りに励み、仲間と励ましあうウッドクラフト制作は、現代の子どもの悲劇を克服するエネルギーをいっぱい内包しているかもしれません。

ジュニアの部審査委員長 寺内 定夫
(玩具デザイナー)

グランプリ

作品名 / 多組み(たくみ)積み木(ブロックス)
氏名 / 草野 浩毅(東京都立 工芸高等学校 3年)

【作者コメント】
 普段の授業等で慣れ親しんだブナ材を主材として使うことで素朴な木の味を表現し、可動部分や接続部分にもタボ等を使い、全体を木材のみにこだわりました。また、触った時に温もりが伝わる仕上がりを心がけました。積み木本来の遊び方に可動や接続、組み込み等の様々なギミックを加えることで表現の幅を広げました。さらに1つの形として固定できる要素を加えました。積み重ねるだけではできなかった立体的な表現が可能となり、使い手の創造性の幅をさらに広げられるのが”多組み(たくみ)積み木(ブロックス)”の最大の特徴です。

【講評】
 一つ一つの積み木が四角や三角になり、平面や立方体へと自由自在に変化し、さらにそのひとつずつの固体が組み合わさって遊ぶ世界を広げてくれる、創造力を育んでくれるユニークな積み木です。作品の完成度の高さは、長年、学校で基礎的な木工技術を学ばれた成果でしょう。当初この作品はグランプリグループから外れていました。審査員が遊んでみてその面白さを発見。全員一致でグランプリに推挙されました。おめでとう。
井上 重義(日本玩具博物館 館長)

準グランプリ

作品名 / クレイジーショベル
氏名 / 南 航太郎、大竹 僚、新井 大輔、江黒 友基
(埼玉県立大宮ろう学校 2年)

【作者コメント】
 このおもちゃは、木製アームを操作しながら物を掴んだり、離したりして運ぶことが出来る楽しい遊具です。アーム本体を前後左右に動かすことも出来ます。アームの微妙な動きを、手先を使い上手くコントロールして、移動させることが出来た時は、本当にうれしくなります。出来るだけ木材を使いましたが、どうしても木材では難しい所には、アルミパイプや鉄のボルトやナット類を使いました。使った木材は、家屋の新築工事で不要となった端切れ材(針葉樹)や、古い学校家具に使われていたブナ材など(広葉樹)を使いました。良質な貴重な木材を可能な限り再利用し、楽しい遊具として復活させました。節や欠けがあったりしますが、とことんリサイクルしようという気持ちで私達4人は作りました。

【講評】
 パワーショベルのアームや油圧シリンダーなどがリアルに再現してあり、思わずさわって動かしてみたくなります。しかし、操作は微妙で簡単ではありません。何度か挑戦しコツをつかんでうまくいった時、思わず「やったー」と声が出る。そんな、使う人に達成感を味わわせてくれる作品です。作品説明にもあるように、建築端材や廃物から材料を再利用し活かしていこうという姿勢は、これからの地球にとって大切なことで好感が持てます。
足立 晃一郎(篠山養護学校教諭)

準グランプリ

作品名 / 考える人
氏名 / 東郷 莉紗(姫路市立 花田小学校 5年)

【作者コメント】
 信州旅行へ行った時、山で拾った白かばのかれ枝と、川で拾った流木で作りました。作る物は何にしようかと考えていたら、「考える人」になりました。

【講評】
 素朴でシンプルな作品ですが、それがかえって強い印象を与える結果になったと思います。素材と大きさのバランスも良く、写実的に見れば異様に長い足も、小さい頭も決して不自然ではなく、うまく三角錐の構図を作って、安定感の有る形になっています。また、対(つい)にしたことで、それぞれの素材の特徴をより引き立てていますし、置き方や置かれる環境によっても、いろいろと違った魅力を発揮することでしょう。
礒尾 隆司(彫刻家)

優秀賞

  丹波市長賞  合体「き」  西川 勝磨(東京都立 工芸高等学校 3年)
  丹波市議長賞  バランスウッド  堀本 紘代(篠山市立 城南小学校 6年)
  丹波市教育委員会教育長賞  変身カタツムリ  平戸 拓也(寒川町立 寒川東中学校 2年)

アイディア賞

  兵庫県芸術文化協理事長賞  新鮮な魚  坪井 利乃(寒川町立 寒川東中学校 1年)
  財団法人兵庫丹波の森協会理事長賞  ビーダマダンジョン  澤田 健吾(三田市立 あかしあ台小学校 5年)

奨励賞

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  森のなかま  大對 柚希(篠山市立 雲部小学校 6年)
  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  手作り東京タワー  古谷 空翔(三田市立 あかしあ台小学校 4年)
  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  ピアノの森  岩谷 優太朗(姫路市立 花田小学校 2年)

努力賞

  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  廃材チェアー  足立 遥(三田市立 あかしあ台小学校 4年)
  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  ふくろう  南 力斗(丹波市立 鴨庄小学校 6年)

特別賞

  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  魚影の群れ  大阪府立修徳学院学院 第3寮
  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  工芸 Istory  荒田 絵理子、藤村 友子(東京都立 工芸高等学校 3年)


出展校数:26校、個人出展2名/出展作品数:304点


審査員

    【審査委員長】玩具デザイナー  寺内 定夫
    篠山市立 篠山養護学校 教諭  足立 晃一郎
    彫刻家  礒尾 隆司
    日本玩具博物館 館長  井上 重義
    三田市中学校美術部会員  大前 勝彦