第20回受賞作品 [一般の部]

審査総評

 丹波の森ウッドクラフト展も、今年が20回目。人間の世界に例えれば、まさに成人式を迎えたということになります。
 昨年の審査会の席上、「来年20回目を迎えるにあたり、何か特別なイベントにする必要があるのでは…」という提案が主催者からありましたが、私たちが出した結論は「これまでどおりで」というもの。その背景には、ものを創造し、作るという作業においては、20年は単なる通過点に過ぎないという思いがあったからです。
 そんな20回目の今年、改めて応募作品全体を眺めてみると、いつにも増して作品の質が向上していることに気付きます。常連の応募者の作品は着実に完成度を高めているし、初めて応募した方の作品には、発想の新鮮さが垣間見えます。その面白さは、プロの作品もアマチュアの作品も同じ土俵の上で審査するというスタンスにあると考えています。だとすれば、もっと大胆な作品、もっと型破りな作品が登場してきてもいいはずです。キラリと輝くものは、そんな中から生まれてくるのではないでしょうか。

雑誌編集者 小田桐 充

グランプリ

作品名 / 絡舞
氏名 / 村上 章
使用樹種 / カリン、チーク、エンジュ

【作者コメント】
 オルゴール(ぜんまい式)を動力として動く作品です。(正面左下のネジを巻いてください。裏側の丸スイッチで、ON・OFF切り換え)

 螺旋状に組んだS字型が左右絡み合いながら回転します。又、回転と共に次々に形が変化します。

【講評】
 S字型に切り抜いて水平に並ぶ多数の木片が、ぶつからずに交差して形を変化させる、動くオブジェである。水平の板が回転しながら交差するバリコン(可変蓄電器)のような機構で、もしかしたら作者はあのコンデンサーの形からヒントを得たかと思った。S字型を少しずつずらして波形にしたのが発見で、これによって動きながら変容する形態が面白くなった。水平に設置するとまさに海の波の動きである。絡むという指定テーマをみごとに表現した。下部の二枚の歯車は見せなくてもよく、箱を重くすれば円形台も無用と思う。

組み木デザイナー 小黒 三郎

準グランプリ

作品名 / 小人さんのひもつくり
氏名 / 村井 中
使用樹種 / パイン材、杉他

【作者コメント】
 ハンドルを回すと7人の小人が糸を絡んでひもを作ります。このひもなら白雪姫も安心です。

 ひもを作る機械の機構を応用しています。糸の色を変えたり、小人の配置を入れ換えると、ひもの模様が変わります。

【講評】
 「機素/きそ」という言葉がある。 文字通り「機械の素」という意味であるが、どんなに複雑な機械であっても、その元をたどれば、実に簡単な仕組みの組み合わせであることが理解される。

 この「小人さんのひもつくり」は、いわゆる「自動組み紐機」を木で表現したものである。機構そのものは目新しいものでがないが、かなりの精度を要求される機構ではある。その精度を要求される機構を「木」で作る、という発想にも感心するが、何度ハンドルを回しても、そのかみ合わせがズレたりすることはなかった。その制作技術の確かさに賞賛を送りたい、と思う。

 また、その複雑な機構に「白雪姫と七人の小人」という、メルヘンの世界を持ち込んだことも賞賛に値する。

 ただ、この「自動組み紐機」の動く仕組み、いわゆる「機素」の部分が見えなかったのは残念であった。七人の小人が規則正しく動きながら紐を編んでいくのだが、どのような仕組みで、小人がこのような動きをするのか・・・。できれば、その動く仕組みが見えた方がより良かったのではないだろうか。
現代玩具博物館館長 西田 明夫

優秀賞

  丹波市長賞  TAMAとMIKE  山根 亮二
  丹波市議長賞  木のショベルカー  山上 哲
  丹波市教育長賞  よっこらぞう  中山 和人

特別賞

  兵庫県芸術文化協会理事長賞  バビロン  松本 昌人
  財団法人丹波の森協会理事長賞  絡舞(からまい)  濱田 昭文

アイディア賞

  丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞  ネコの組体操と騎馬  川原 眞
  丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞  アートde花ごま  中村 和子
  丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞  スパイラルツリー  加藤 克俊
  丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞  ペッカー組み木二点セット(動物シリーズ&鳥シリーズ)  守重 シゲ子

技能賞

  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  ドさかなつり  城本 素史
  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  スタンド 花てまり(組子)  阿曽 一弘

奨励賞

  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  tumiki  松葉 聡

ユーモア賞

  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  ムムッ、パパはつらい!!  西尾 武人


出展作品数は75点(内テーマ作品数は26点)、出展数は68名


審査員

【審査委員長】小黒 三郎 組み木デザイナー
小田桐 充  雑誌編集者
西田 明夫  有馬玩具博物館館長
日野 永一  兵庫教育大学名誉教授
水上 喜行  大阪教育大学教授