第21回受賞作品 [ジュニアの部]

審査総評

作って楽しめる場を

 今回も小学生から高校生までたくさんの作品が集まりました。手間隙かけた優秀な作品を幾つも見かけましたが、気になるのはここ数年、既成の部材を使った作品が目に付くことです。鋸や小刀を使わないで、市販の部材を接着剤で組み立てるだけでは、道具を使う技量や材料の性質などを学ぶことができません。それに独創的な作品が毎年少なくなっているのも気がかりです。

 「作ったもので遊ぶ」ことは、子供時代に体得しなければならない大切なことです。なのに、そんな作品が少ないのも気がかりです。現在の子供がおかれた環境を考えると、家庭には木工作をする場所も材料も道具もないという、状況の反映ではないかと思います。

 入賞作品の多くは、コメントからも家庭環境などに恵まれていることに気付きます。子供たちは本来、もの作りが大好きです。スポーツをする場だけでなく、もの作りの好きな子供たちが育つ場があれば、すばらしい作品がもっと集まってくるでしょう。

ジュニアの部審査委員長 井上 重義
(日本玩具博物館 館長)

グランプリ

作品名 / 汽車の貯金箱
氏名 / 新井 大輔(埼玉県立 大宮ろう学校 3年)

【作者コメント】
 この貯金箱は、汽車の煙突から硬貨を入れて、貯めます。お金がたくさん貯まり重くなると後ろに下がり、発光ダイオードが光り、お金がたくさん貯まったことを知らせてくれます。お金の重みで、汽車を後ろに徐々に動かしていくことのおもしろさがあります。

  お金が貯まったら、連結器を外して、汽車の扉を開けてお金を取り出します。500円玉で貯金すれば、8万円以上貯まると思います。木材は端切れ材を使い、狂いが出ないように工夫して加工し組み立てました。細かい部品の加工がたくさんありとても難しかったのですが、作って楽しい、使って楽しい貯金箱だと思います。

【講評】
 材料は、廃材であるはぎれ材を工夫して作られたとのことですが、資源を大切に活用するというその発想や、仕上げも丁寧で加工の精度も高く、最高学年だけの技量があると審査員一堂から高い評価がありました。飾るだけでも見ごたえ充分ですが、それを貯金箱に仕立て、硬貨がたまると汽車が後ろに下がって発光ダイオードが光る発想もユニークです。これからも専門の技量を生かし、活躍されることを願っています。
井上 重義(日本玩具博物館 館長)

準グランプリ

作品名 / 海の向こうへ
氏名 / 蓮溪 芳仁(湖北町立 朝日小学校 5年)

【作者コメント】
 見たことのない、行ったことのない世界を夢見て海を渡った帆船を木の角材を積み重ねてつくりました。映画の「パイレーツ・オブ・カリビアン」を観て作ろうと思いました。

【講評】
 まず、この作品を目の前にして、その作品の大きさに圧倒されました。威風堂々としたその船体に目を向けると、苦心してのこぎりで木材を切った跡や、木材のつなぎ合わせ方、甲板上の動物たち、マストの上の鳥の飾りなど、世界を夢見て、大海を航海している様子を想像しながら、制作に励んだ光景が見えてくるようです。工作精度の高さもさることながら素晴らしい作品が出来上がりました。
大前 勝彦(三田市中学校美術部会員)

準グランプリ

作品名 / 私たちの世界遺産
氏名 / 西宮市立今津中学校 美術部
(西宮市立 今津中学校 1~3年)

【作者コメント】
 私たちが大切にしなければならない世界遺産の一部を立体的に表現しました。後に、学校に飾って、役に立てばいいなと思います。人類みんなで守っていき、そして世界中が仲良くできたらいいと思います。私たちの住んでいる日本は大きくしました。特別支援学級の生徒もがんばりました。

【講評】
 大作で、共同製作らしさがよく現れている作品です。地図と遺跡のバランスも良く、特に世界地図の方は、まるでリアス式海岸のような細かい輪郭を丁寧に切り抜いてあり、大変美しく仕上がっています。遺跡の建造物なども、彫刻刀で細かい細工が施され、苦労の跡が伺えます。ただ、タイトル文字のカラフルな色分けは必要なかったのではと思います。壁飾りとして、また学習教材としても長く愛用されることを願います。
礒尾 隆司(彫刻家)

優秀賞

  丹波市長賞  In the Forest  修徳学院 第3寮(大阪府立修徳学院 小6~中3年生)
  丹波市議長賞  森の音楽会  細見 岳(丹波市立春日部小学校 6年生)
  丹波市教育委員会教育長賞  T.レックス  村田 佑人(東京都立工芸高等学校 3年生)

佳作

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  カエル ケロケロ  平戸 拓也(寒川町立 寒川東中学校 3年生)
  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  ぼくのピノキオ  岩谷 優太朗(姫路市立 花田小学校 3年生)
  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  木の家  鎌田 萌(三田市立 あかしあ台小学校 6年生)

学校賞

  (公財)兵庫丹波の森協会理事長賞 丹波市立北小学校


出展校数:23校、個人出展5名/出展作品数:306点


審査員

    彫刻家  礒尾 隆司
    日本玩具博物館 館長  井上 重義
    三田市中学校美術部会員  大前 勝彦