第23回受賞作品 [一般の部]
今回の公募展では60点近い応募があり、多くの力作・高いレベルの作品が集まりました。
それらの審査をとおして、あることに気がつきました。それは、今回の出品者・受賞者の年齢や出品回数に表れているベテランの方々の創作パワーの大きさです。長年の経験や多くの知識、玩具への強い思いを裏付けに、制作技術を磨き制作してみえるベテランの方々の作品レベルは年々高まってきていると実感します。高い完成度を誇るグランプリ作品や準グランプリ作品をはじめとして受賞作品を見ると、制作者の方々の玩具づくりに向かう情熱や時代を見る目、そして子どもへの優しいまなざしが感じられます。一方、今回の若手の受賞者は1名の方だけという結果でしたが、その作品は若手代表としてのフレッシュな勢いと今後の可能性を感じさせます。
今、時代は環境・経済問題をはじめとして不確定要素が多く、ゆとりが持てない時代ということもできます。こういう時代にこそ、木という自然の優しい素材を使用して、人を癒し元気づける玩具づくりに挑戦して、私たちの生活に安らぎと調和を生み出したいものです。今後も、若手からベテランまで多くの方々に意欲ある作品を出品いただき、この公募展の意義がさらに高まることを願っています。
名古屋女子大学教授 渋谷寿
グランプリ
作品名 /「はいしどうどう」組み木5点セット
氏名 / 守重 シゲ子
使用樹種 / ブナ、トネリコ、ミズメ、ナラ他
【作者コメント】
底部に円 弧を使い、「揺れる」組み木ですが、さらに円弧の一部分を切り抜いて、動物の前後の脚を離すことで、揺れる時に床面を蹴って跳ねる動物のイメージにした点がこのシリーズの特徴です。
動物本体に子供を乗せて遊びます。子供以外の動物や物を足して乗せていく遊び方もできます。
【講評】
組み木の面白さは、木片の構成と組むパズル遊びにあるが、この5点の作品は子どもの想像力をふくらませる工夫に満ちている。
今回のテーマの「揺れる」から発想して、組み木を揺らす楽しさが加わった。2005年に準グランプリを受賞して以来、作者は毎年発想を新たに出品し、6年目にして最高賞に達した。組み木ひとすじに打ちこんで、形を追求した努力の成果と思う。6年生、卒業お目出とう!という思いはぼくだけではないだろう。継続は力と審査員三人を納得させる受賞だった。
組み木デザイナー 小黒 三郎
準グランプリ
作品名 / パクパク
氏名 / 松本 悦男
使用樹種 / サクラ、クリ、ブラックウォールナット、カリン、ウルシ、キリ、モチ、ケヤキ
【作者コメント】
起き上がり小法師の原理です。
下部の出っ張りを持ってころがすと上部の動物の頭が、口をパクパクさせながら揺れます。
【講評】
起き上がり小法師の原理を使ったダイナミックな「揺れ」が魅力の作品です。特におとぎ話に出てくる龍をイメージさせる、口がパクパク動く頭部は想像以上に大きな動線をえがき揺れ動くことに驚かされます。また、動物の口が動く構造は各部品の重量バランスがよく考えられて面白い動きを生んでいます。これらは半球状の本体ベースの中央から伸びた、おそらくグラスファイバーやカーボン製の釣り竿素材が効果的に使われているからだと思われます。揺れと共に音が出る構造も様々な樹種を用いて工夫されており、アイデアの質や工作精度も高いベテランらしい安定した作品になっています。
名古屋女子大学教授 渋谷 寿
優秀賞
丹波市長賞 ゆめのゆりかご 大森 恵
丹波市議長賞 揺れる政権(与党vs野党) 山根 亮二
丹波市教育長賞 ゆれコロ魚つり 中村 俊雄
新人賞
(公財)兵庫丹波の森協会理事長賞 コ・ワ・イ 冨田 一男
特別賞
三木工業協同組合理事長賞 おっかけっこ 久保 進
佳作
丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 夢みる人 小池 恵美子
丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 みんなでかけっこ 寺谷 建明
丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 前進、後退に『ゆれる首と尾っぽ』『キリン』 三浦 正夫
出展作品数は57点(内テーマ作品数は44点)、出展数は50名
審査員
【審査委員長】 小黒 三郎 組み木デザイナー
渋谷 寿 名古屋女子大学教授
日野 永一 兵庫教育大学名誉教授