第25回受賞作品 [一般の部]

 今年は第25回展を迎え、この公募展は四半世紀に及びました。大型遊具を公募した初回から、ぼくは審査にかかわり、その時から25歳、年が経ったのだと思うと感慨深いものがあります。25年、年輪の里の樹々も大きく伸びて成長しました。
 木のクラフトを公募する催しは、東京を初め各地で開催されてきましたが、こんなに長続きしている所はありません。しかも、「遊び・戯れ」という、人間の心身の成長に最も滋養を与えるテーマをかかげ、今は「木のおもちゃ大賞展」と的をしぼっているのは、世界中を探しても無いです。今頃になっていわれ始めた「木育」を、25年も前から実施してきたユニークな公募展と思います。
 今年は若い学生たちが応募してくれました。それでも入賞者11名の平均年齢は52歳です。
 シンプルな仕上げで製品化もできる木のおもちゃが、新しい発想のもとに生まれてくることを期待してやみません。今年から「学生賞」を設けることにした所以です。

組み木デザイナー 小黒 三郎

グランプリ

作品名 /空(クウ)チュウ
氏名 / 永尾 陽祐(沖縄県)
使用樹種 / アカギ、リュウキュウマツ、ハマセンダン、イタジイ、クスノキ

【作者コメント】
 左右のキイを叩くと、2羽の天使が音をたててジャンプします。
タイミングが合えば2羽が空中でくっついて静止します。

 まん中のキイを叩くと「おじゃま虫」が飛び上がり、うまく当てると天使たちを引き離します。

 2人でも3人でも遊べます。

【講評】
 流れるような曲線を生かして、見た目にも美しい作品ですが、遊んでみると、その動きの面白さにとりつかれ、男女の天使が「空チュウ」に至るまで、下のキイから手が離せなくなるでしょう。天使が空に昇ってチュウする仕掛けを、作者が発想したときの喜び、それをいかに美しい色と形で表現し、動きを工夫したか-デザインする楽しさが、作品から伝わってきます。離れていた天使が丸棒を伝わりながら昇って近づくために、丸棒をゆるやかに曲げたのも効果的です。磁石でチュウしている二人の天使に、おじゃま虫が割って入るのも、遊び手を二人、あるいは三人と増やして楽しめるおもちゃになりました。

  下部のキイを叩く箱の一体化、全体の小型化など、さらに単純化すれば製品化は可能と思います。音の効果はメープルなどの堅木でも出るでしょう。沖縄産の堅木が安く手に入ればアカギなど使いたいものですが。曲線の丸棒をステンレスに変えてもいいでしょう。

組み木デザイナー 小黒 三郎

準グランプリ

作品名 / マンモストン
氏名 / 平良 勇(沖縄県)
使用樹種 / ホワイトウッド、トガ

【作者コメント】
 板材を曲げてマンモスの形に成形しました。(マンモススベリ台)
 子マンモス(木球)が、鼻のスベリ台を転がって、鼻先のマン島へジャンプ。それから先は4個のレールを配置してコーズを作り、部屋いっぱい使って遊んでほしい。

【講評】
 カーブが美しいマンモスの滑り台から、木球を転がしジャンプさせるスケール感のある玩具です。マンモスの鼻を伸ばして、ジャンプの動きを変化させたり、ジャンプ後の木球が転がるルートをつくる木部を重くするなど、実際に遊びを楽しもうという意図で様々な工夫がなされています。曲げ木を使った、今までにありそうでなかった曲面の構造は新鮮ですが、子マンモスに見立てた木球には、もう一工夫があると更に良かったと思われます。

名古屋女子大学教授 渋谷 寿

優秀賞

   丹波市長賞  がりがりーくるくる  村井 中(埼玉県)
   丹波市議長賞  フリフリ散歩  中村 俊雄(山口県)
   丹波市教育長賞  海豚(イルカ)ショー  西田 均(大阪府)

新人賞

  (公財)兵庫丹波の森協会理事長賞  遊木(ゆうき) 大倉 悠揮(岐阜県)

特別賞

  三木工業協同組合理事長賞  ちから合わせて 佐藤 敏男(埼玉県)

佳作

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  空を飛ぶドラゴン  武村 博(岡山県)
  丹波の森ウッドクラフト展  実行委員長賞  iroawase  渡辺 野愛(静岡県)
  丹波の森ウッドクラフト展  実行委員長賞 火まつり  谷口 正敏(兵庫県)

学生賞

  丹波市製材協会賞  ちどり  神谷 礼香(東京都)/東京造形大学


出展作品数は69点(内テーマ作品数は36点)、出展数は61名


審査員

  【審査委員長】 小黒 三郎 組み木デザイナー
    渋谷 寿  名古屋女子大学教授
    日野 永一  兵庫教育大学名誉教授