第26回受賞作品 [ジュニアの部]

審査総評

 このウッドクラフト展は今回で26回目。歴史ある公募展になりました。応募者は高校生以下の子どもたちですが、今回の出展数は175点。昨年度と較べると約50点も減少しました。その要因は出展校数の減少にあるだけでなく、日常的に子どもたちが道具を使ってモノを作る時間がなくなり、道具を使いモノ作りを楽しむ子どもたちが減少した結果といえるでしょう。

 今回の応募作品を見て感じたのは、時間をかけて一生懸命作ったことが伺える作品や自然素材を使った作品などが少なく、木片を接着剤でとめた作品が目立ちました。残念ながら、よく頑張ったと賞賛できる作品が年々少なくなっています。実は入賞者を選ぶために審査員は賞の数と同数の10枚の付箋をもち、良いと思う作品に付箋を付けるのですが、私自身、付箋を使い切るのに苦労しました。他の審査員からも同じ言葉をお聞きしました。それと受賞者に偏りが出てきています。身近にものづくりのできる場や指導者のある子供とそうでない子どもとの較差が大きくなっているのです。

 子ども時代にモノを作る楽しさや喜びを体得させることは、社会の将来にかかわることです。社会がそのことの大切さに気付き、一人でも多くの子どもが日常的にモノつくりができる場を確保することが必要な時期に来ていると思うのです。

日本玩具博物館 館長 井上 重義

グランプリ

作品名 / ワンダフル オーシャン
氏名 / 西宮市立今津中学校 美術部

【作者コメント】
 まず全員がそれぞれの生き物をどのように作ってどういった動きをするかというのを考えるのに苦戦してました。さらに失敗したら作り直しというのも大変でした。だけど苦労してようやく自分の生き物が完成した時は、みんな喜んでたのでよかったです。
 そして今回は、からくりの部品も作らないといけなかったのですが、細いパーツも全員で分配して作業することができ、スムーズに作品づくりが進めたことがよかったです。

【講評】
 作品の大きさや迫力だけでなく、ひとつひとつに工夫を凝らされた仕掛けがすばらしく、出展作品の中でもひと際目立ちました。美術部員の共同作品とのことですが、部員一人ひとりが海の生き物たちの動きを研究し、作品に反映され、時間をかけて制作されたことが作品から伝わってきます。個々の作品の完成度も高く、完成したときの充足感や喜びが作品から伝わってきます。
日本玩具博物館 館長 井上 重義

準グランプリ

作品名 / 花と鳥と人(目)
氏名 / 川中 波(三田市立あかしあ台小学校 3年生)

【作者コメント】
 糸のこ盤やボール盤を使うとき、最初は線の通りに切ることが出来なかったけど、練習するうちに線通りに切ることが出来、とてもうれしかった。作っている間は楽しくて、ほとんどきゅうけいすることなく集中して作りました。
 昨年はおじいちゃんがつくったがくぶちのはざいで作りましたが、今年は全て自分で作れたのもうれしかったです。
 色んな角度がら鳥や花、目が見えます。ぜひ楽しんでください。

【講評】
 手作り感いっぱいの、カラフルで楽しい作品です。細かい部品をうまくつなぎ合わせて、どの方向から見てもバランス良くできています。木工作品は多くの場合、木の質感を生かすためにも、あまり派手な彩色はしない方が好ましいのですが、この作品に関しては、彩色が効果的で、強いインパクトと生命感を与えています。現代アートとしてもじゅうぶん通用しそうな、作者のセンスと造形力が伺える優れた作品です。
彫刻家 磯尾 隆司

準グランプリ

作品名 / トリプルバランス
氏名 / 近藤 誠(埼玉県立特別支援学校 大宮ろう学園高等部 産業工芸科 2年)

【作者コメント】
 日本の代表的な玩具と言われている「ヤジロベエ」の原理を使った貯金箱を考えてみました。3つの貯金箱があるこの「トリプルバランス」は、支点が1つだけあり、倒れないで安定させるために3つの貯金箱にバランス良くお金を入れる必要があります。
 最初の試作品は、支点と重心の関係が解らず、不安定でした。さらに改良した試作品を考案し、木工室に置いておくと、この試作品は、3ヶ月間、これまで一度も倒れませんでした。この試作したサイズで本製作に入りました。ようやく仕上がりましたが、3本の腕の角度を決めるのにとても苦労しました。埼玉県加須市の工務店さんから頂いた端切れ材を使いましたが、良質な木材を加工する楽しさを学びました。

【講評】
 遠くから見たときには、小さいシーソーかと思いましたが、なんと巨大な貯金箱だと解って驚かされました。長い三本のアームを、やじろべえのように細い芯一本で支え、三方それぞれの貯金箱を地面すれすれで浮かせるバランスの良さに感心しました。ただ、アームが単調過ぎて面白さに欠けます。例えば、人物を連想させる様な形にすれば、もっと楽しい、あたたか味のある作品になるのではと思いました。

彫刻家 磯尾 隆司

優秀賞

  丹波市長賞  ビー玉転がし  足立 晃基(丹波市立北小学校 6年生)

  丹波市議会議長賞  にんじんのはたけ 大和田 智子(東京都立工芸高等学校 3年生)

  丹波市教育長賞  ゲノセクト  松井 竜輝(丹波市立東小学校 5年生)

特別賞

  三木工業協同組合理事長賞 

「ハンドルまわそう」 くるくるマシーン4号 ゆらゆらカゴで玉入れ大会 足立 雄飛(丹波市立北小学校 6年生)

佳作

   丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  木り撮り(きりとり)  関 なつみ(東京都立工芸高等学校 3年生)
   丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  木のおもちゃ(車)(汽車)  福原 大生(三田市立あかしあ台小学校 6年生)
   丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  ペンギンとらいおん  河村 一慶(三田市立あかしあ台小学校 1年生)

学校賞

  (公財)兵庫丹波の森協会理事長賞 埼玉県立特別支援学校 大宮ろう学園高等部 産業工芸科


出展校数:14校 / 出展作品数:175点


審査員

  【審査委員長】 日本玩具博物館 館長  井上 重義
    彫刻家  礒尾 隆司
    三田市中学校美術科教諭  大前 勝彦