第28回受賞作品 [一般の部]
審査総評
丹波年輪の里ウッドクラフト展の出品点数は、昨年は百点をわずかに超えたが、今年は満たなかった。同じ作者が何度も出展する傾向も多くなっている。
作品の技術面は確かに良くなってはいるが、最近は一口いえば、工芸的に「凝り過ぎている」作品が目立ってきた。発想が決まっていて、材質や技術に手間をかけ過ぎているのである。作品を評価するとき、最も大切なのは工作技術ではなく、発想の新しさである。審査員は作品を手にとって遊んでみる。面白いと思うのは発想であり、作り手の技巧ではない。
人間が手を使わなくても木を立体的に制作できる新しい工具が開発されてゆく時代になった。ボタンを押せば、モデルと同じ形ができる工具も生まれてきている。これではこの展の趣旨「自分の手で創造の喜びを創り出す」ことにはならない。手を使わなくなったら創造力も衰えてゆくだろう。
木のおもちゃは、一品制作でなく多くの子らや年寄りなどにも届けたいと思う。製品化が可能かどうかを考えるデザインが生まれてこなければ、日本に木のおもちゃを作るメーカーは育っていかない。ヨーロッパの木のおもちゃが今日以上に増えてゆくだろう。
おもちゃのデザインを考え、自分の手を使って作る喜びを知る。そういう思いを育てる木のおもちゃコンペでありたいと願う。
組み木デザイナー 小黒 三郎
グランプリ
作品名 / 地球のなかま
氏名 / 田中 陽三(兵庫県小野市)
使用樹種 / ケヤキ、ブナ、メープル
【作者コメント】
「地球は、いろいろな生き物が仲よくバランスを保ちながら生きていくことで維持されている」ことを感じてもらいたいという思いで作りました。中央の青い球は地球。下の半球は、仮想の地表。不安定な地表にいろいろな生き物のパーツを、地球を傾けないようにバランスを取りながら配置して遊びます。パーツはペグにさしたり、地表に置いたり、重ねたり、立てたりしてバランスをとります。ペグ付きのバーを使えば配置のバリエーションはさらに広がります。
パーツをすべて外した状態では倒れないコマとして遊べます。
【講評】
半球に近い大きな独楽はケヤキで作られており、かなりの重量がある。周囲には8本のペグが差し込まれており、そのペグに花や葉や蝶、鳥や馬や人などの木庁を差し込むことが出来る。独楽を回した時に、バランスよく回すためには。木庁の差し方を工夫しなければならない。独楽の周囲と広げるためのペグもあり、遊び方も広がるだろう。木庁の形がシンプルで、遊びの多様性を工夫したアイデアがよい。軸の上の青い地球を両手で挟んで回すと、「地球の仲間」を操っている気宇壮大な気分に浸れるだろう。テーマに遊び手のイメージを広げるメッセージ性がある。
おもちゃをデザインするとき、多くの子ども、大人たちに遊んでもらいたいと思うのは誰しもだろう。この作品を製品化しようと思うとき、ネックになるのは大きさと重さである。独楽を長く回転させるには、ある程度の重さも必要だが、全体のサイズと重さをどこまで縮小できるか、考える必要がある。
組み木デザイナー 小黒 三郎
準グランプリ
作品名 / 反義語サイコロ
氏名 / 大久保 武(京都府城陽市)
使用樹種 / 桧材
【作者コメント】
木のぬくもり、優しさ、そしていい香りのする桧材で、反義語サイコロを作りました。
ボケ予防の老人は勿論の事、小学生の中・高学年なら、何人でも遊べるものだと思います。二人なら10個の持ちサイコロで勝負。五人なら4個の持ちサイコロで勝負等……。ワイワイ言いながら遊べるものと思います。漢字も覚えられるし、遊べるしで一石二鳥だと思います。
【講評】
立方体で対面に漢字の反義語が表現されている、今までにない発送で創られた美しいサイコロです。ヒノキという日本を代表する木を用い、漢字をモチーフとした日本的な温かみのあるデザインです。漢字が標準的な字体でくり抜かれ、中を空洞にする事により、軽く、サイコロとして振りやすく考えられています。反義語を考えながら遊ぶことができると同時に漢字も学べるという、遊びと学びという機能を合わせ持つ、可能性を秘めた作品だと言えるでしょう。
名古屋女子大学教授 渋谷 寿
優秀賞
丹波市長賞 書棚のデコ 加藤 哲也(神奈川県)
丹波市議会議長賞 まわしてつくろうステキなくるま 大森 栄司(兵庫県)
丹波市教育長賞 こどものおうち 宮﨑 昌洋(茨城県)
新人賞
(公財)兵庫丹波の森協会理事長賞 えさとりわんこ 松葉 正次郎(奈良県)
特別賞
三木工業協同組合理事長賞 権べぇと唐箕 白木 操(兵庫県)
佳作
丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞 SQUARE ROBOT & CIRCLE ROBOT 植村 浩一(埼玉県)
丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 おさんぽラッコ 久保 進(東京都)
丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 正方形・円パズル 河野 一郎(三重県)
学生賞
丹波市製材協会賞 コルク木砲(射的) 戸塚 健太(金沢科学技術専門学校)
出展作品数は94点(内テーマ作品数は34点)、出展数は88名
審査員
【審査委員長】 小黒 三郎 組み木デザイナー
渋谷 寿 名古屋女子大学教授
日野 永一 兵庫教育大学名誉教授