第30回受賞作品 [一般の部]

審査総評

 ひところ全国で盛んに開催された「木工」「クラフト」などのコンクールも、現在ではその多くが姿を消して類似の展覧会も数少なくなりました。その中で出品者をはじめ多くの方々に支えられ、地道な活動を続けてきたこの「丹波の森ウッドクラフト展」は30回を迎えることになりました。今後のさらなる発展に向けて、関係者も努力してまいりたいと思います。
 このコンクールも最近は力作が並び、審査も苦労することが多くなりました。中にはもう少しで入賞するのに残念だなという作品が少なからず目につきます。作者の努力がしのばれ、浮かんださまざまなアイデアを形にしたいという気持ちは十分理解できるのですが、作品が複雑になり、かえって効果を薄めることになりがちです。新しいアイデア、優れた技術、形の美しさや作品のかもしだす雰囲気など、その特色を十分認識してもらうために、ねらいを絞って単純化し、そのねらいを生かすデザインを表現することが、人々に訴える力となります。
 この30回展を新たなスタート点とし、来年に向けてさらなる前進をされることを願っております。

兵庫教育大学名誉教授 日野 永一

グランプリ

作品名 / くつろぎの空間
氏名 / 土屋 彰人(長野県)
使用樹種 / エンジュ、ケヤキ

【作者コメント】
 ロッキングチェアーに揺られながら珈琲タイムや読書、薪ストーブのある部屋で炎を見ながらゆったりとした時間を過ごす。そんな夢を小さな空間に表現してみました。※煙突がスイッチになってLED照明が点灯します。小物を自由に配置して自分なりに楽しんでください。

【講評】
 大きな丸太の一部分を刳り貫いて部屋を彫りこみ、そこに暖炉やつららの下がっている窓、ロッキングチェアや洒落た木の葉型の壁飾り、照明具などをしつらえている。それらの作り方がどれもこれも小さく、さらに動くのだ。
  煙突のスイッチを入れると、部屋に明かりがつき、こんな家に過ごしてみたいと思う。審査員三人とも「かわいい」と思わずつぶやいた。照明の効果が、30回の作品群の中で抜群だった。作者の心のあたたかさが伝わってくる。

組み木デザイナー 小黒 三郎

準グランプリ

作品名 / 親(竹)と子(たけの子)のパズル積木
氏名 / 山根 亮二(兵庫県)
使用樹種 / ウォールナット、ブラックチェリー、クス

【作者コメント】
 ウッドクラフト展も回を重ねて記念の第30回、そしてテーマが「30」。30コのパーツで出来た竹とたけの子1コ or 2コ1を親子で会話しながら積み重ねる~作品名も親(竹)と子(たけの子)のパズル積木。完成するとオブジェとしても!

【講評】
 親子を意識させる、「竹」と「たけの子」の温かみのあるパズル積み木です。これらは、一見本物かと見間違える程のリアリティーがあり、特に「たけの子」の皮の表現には驚かされます。パズル部分は、今回の30周年に因んで、正確に加工された30個のパーツから構成されており、様々な要素が楽しめます。レンコンやタマネギ等の野菜の輪切りをモチーフとした、隠れているピースも美しくつくられています。一つだけある、レリーフ状の「ハート」の周りにラメをちりばめた異色なピースは、愛らしく、ちょっと「かぐや姫」を連想させて心が和みます。

名古屋女子大学教授 渋谷 寿

優秀賞

   丹波市長賞  AGO  水野 咲衣花(山梨県)

   丹波市議会議長賞  カエルの合唱  好 茂、昌子(兵庫県)

   丹波市教育長賞  溪流  蓮溪 円誠(滋賀県)

新人賞

  (公財)兵庫丹波の森協会理事長賞  森からうまれた30の木 阿部 吉伸(北海道)

特別賞

  三木工業協同組合理事長賞  ポルタティフオルガン(Portativ Organ) 小泉 匡(兵庫県)

佳作

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  みらいのゆうえんち(未来型遊園地) 宮本 重信(兵庫県)
  丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞  ほねの音楽隊  大森 栄司(兵庫県)
  丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞  カタカタカタ  冨田 一男(山口県)

学生賞

丹波市製材協会賞  青い鳥 本村 俊司(川越高等技術専門校)


出展作品数は94点(内テーマ作品数は36点)、出展者数は91名


審査員

  【審査委員長】 小黒 三郎 組み木デザイナー
    渋谷 寿  名古屋女子大学教授
    日野 永一  兵庫教育大学名誉教授