第31回受賞作品 [ジュニアの部]

審査総評

 平成の最後となった今年の夏でしたが、記録的な猛暑、豪雨、そして連続発生した台風など、日本列島のみならず世界中に大きな被害をもたらしました。また北海道では、信じられないような大規模な地震も発生し、いつ、どこで、どんな災害に遭うか予想もつかない状況です。幸いにも、ここ丹波地域においては特に深刻な被害は無く、私自身も何事もなく、当たり前のように日々彫刻制作が出来る有り難さを痛感しているところです。
 さて、今回の丹波の森ウッドクラフト展ですが、一般の部、ジュニアの部ともに応募総数が大幅に増加し、第31回という新たな節目のスタートとして大変うれしく思いました。
 出展者の皆さんは、たぶん夏休み中の酷暑の中、汗をふきふき懸命に制作されたことでしょう。私たち3名の審査員は、その努力や工夫点を決して見落とすことが無いよう、頭と感性をフル回転させながら審査させていただきました。
 受賞された方々の作品は、いずれも力作ぞろいで、賞の選定には大変苦労しましたが、たくさんの個性あふれる作品の中を歩き回る事は楽しい苦労でもありました。
 ただ、作品全体を通して感じたことは、規定サイズをいっぱいに使ったような大作が無く、小さくまとまり過ぎていたのが少し残念でした。ジュニアの部ならではの、はじけるようなスケールの大きい作品を今後期待します。

ジュニアの部審査員長 彫刻家 磯尾隆司

グランプリ

作品名 / はばたけドラゴン
氏名 / 大森 春菜(丹波市立南小学校 2年生)
共同制作者 母

【作者コメント】
 子どものドラゴンが大空を元気よくはばたけるよう、教えているようすをくふうしてつくりました。たのしかったです。

【講評】
 このコンクールが始まって以来、最年少のグランプリ受賞者が誕生しました。ご両親ともに一般の部への出品、受賞歴があり環境に恵まれているとはいえ、この受賞は快挙というしかありません。
 流線型の胴体に大きく広げた羽、大きな頭部、しっかりした足や爪先、そこを見ても量感と力強さがあり迫力満点です。
 板の端材、木珠、そろばん玉など、多種多様な素材を、体の部分ごとに的確かつ効果的に使い分け、独特の生命感を表現しています。
 完成までに2か月もかかったそうですが、楽しみながら考え考え、少しずつ積み上げていったことが容易にうかがえ、見る者を圧倒する見事な作品です。

彫刻家 磯尾隆司

準グランプリ

作品名 /  ウッドペーパー
氏名 / 新井 陸、綿引 海斗、山田 直人、渡辺 遙輝
(埼玉県立特別支援学校大宮ろう学園高等部産業工芸科 2年生)

【作者コメント】
 この作品は4人で作りました。太さ40センチの丸太を4人で力を合わせて手鋸で製材し、木取りしましたが本当に大変でした。
 カナダヒバ等の薄い鉋屑を紙に見立てて、この松の木の中にティッシュボックスを作りました。紙のように薄い鉋屑を1枚引き抜くと続けて鉋屑が出てきます。平らな薄い鉋屑を作るのに苦労しましたが、刃物の研磨とかんなの調整を学ぶことができました。

【講評】
 見るからに重量感のある作品です。皆で協力して丸太から切り出した力強さと量感も感じさせます。形自体は素朴なものがありますが、木の持つ年輪や素地を美しく利用した作品です。
 ペーパー部分まで木で作り引き出せる構造は、テッシュペーパーと同じに作ってあり、かなり完成度の高いギミックとなっています。
 何よりも全て木で箱にせず作ってあるところが素晴らしい作品です。

三田市中学校美術科教諭 大前 勝彦

準グランプリ

作品名 / カスタムキッチン
氏名 / 日下部 桃花(愛知県立起工業高等学校 2年生)

【作者コメント】
 引き出しをたくさん作るのが大変でした。全て同じにするのではなく、大きさや形状を変えたりして、より本物のキッチンに近づけられるようにしました。
 なべやフライパンは、板を何枚も重ねて作り、とても難しかったです。でも自分的にはかわいくできたと思っています。
 このキッチンは、4つの箱を自分の好きなように並べることができます。

【講評】
 実際にままごと遊びに使うと楽しいだろうなと感じさせられる作品です。大きさも小さすぎず程よいボリュームがありますし、無垢材を使ったことで木の持つ優しい質感が現われており思わず触ってみたくなるような雰囲気があります。
 また、たくさんある引き出しなどの動く部分や鍋の円筒形に加工されているところは、技術的に難しいので作るのにずいぶん苦労があったと思います。その努力の結果でしょうか、とても魅力的な作品に仕上がっています。

玩具作家 濱田 昭文

優秀賞

   丹波市長賞 楽しそうでむずかしいぐねぐねなゆうえん地  五百藏 洋平 (丹波市立崇広小学校 4年生)
   丹波市議会議長賞 Merry-go-round  辻 亜祐 (大阪市立工芸高等学校 3年生)
   丹波市教育長賞 ジMHベンチ  衣川 慎也、荒川 慶太、和久 隼人、渡邉 碧天 (福知山市立日新中学校 3年生)

特別賞

  三木工業協同組合理事長賞 円形収納BOX 渡瀬 優大(神戸市立御影中学校 3年生)

佳作

   丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  町  大堀 彪真(丹波市立崇広小学校 4年生)
共同制作者 父、母

   丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  三輪車  河田 穂乃実 (神戸市立鈴蘭台中学校 3年生)

   丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  もぐら三兄妹(Rikuto・Mary・Kaito)  田村 真里奈、柴崎 海翔、保木 利仁(埼玉県立特別支援学校大宮ろう学園高等部産業工芸科 1年生)

学校賞

  (公財)兵庫丹波の森協会理事長賞  東京都立工芸高等学校

館長賞

  兵庫県立丹波年輪の里館長賞 跳び箱型物入れ  井上 桃華(神戸市立雲雀丘中学校 1年生)


出展校数:23校 / 出展作品数:155点


審査員

  【審査委員長】 彫刻家  礒尾 隆司
    三田市中学校美術科教諭  大前 勝彦
    玩具作家  濱田 昭文