第31回受賞作品 [一般の部]

審査総評

 丹波年輪の里で開催されてきた「木のおもちゃ大賞展」は今年で第31回となる。こんんなに長く続いて開かれた木のおもちゃ展は、世界に無いだろう。
 木のおもちゃを最も盛んに作っているのはヨーロッパであるが、そのヨーロッパでも、おもちゃを木で作ることに限って募集し、評価して賞金を与えるなどしている国は無い。
 見本市といって、木のおもちゃを集めて展示することはやっているが。ドイツ北部のザイフェンという小さな村では、家族単位で多くの家が木のおもちゃを作っている。ヨーロッパではキリストの降誕を迎える一ヶ月間、村中が木のおもちゃを作り、販売し、世界中から求めに来る客でにぎわう所もある。ザイフェンでは家族単位で木のおもちゃを作ると、優遇される制度があるらしい。ザイフェンには三回ほど行ったが、森の大きな丸太を水で濡らした状態で輪切りにし、ドーナッツのようなその形にのみを当て、動物の形を量産する、独特の作り方が、伝統的にあって、12月はそれを求める人が世界中からやってくる。木のおもちゃが人々に好まれ、売れているのである。ぼくはスイスのネフ社と、1980年からデザイン契約をして、組み木のおもちゃを最近まで売ってきたが、日本でよりもよく売れた。
 残念ながら日本で売られている木のおもちゃはヨーロッパのメーカーから輸入されてきたものなのである。日本にブナ林はいっぱいあるが、残念ながらブナはヨーロッパの材を使っているのが現状である。

組み木デザイナー 小黒 三郎

グランプリ

作品名 / はばたき
氏名 / 田中 優斗(静岡県)
使用樹種 / ヒノキ、シタン、コクタン、カリン等

【作者コメント】
 海を飛ぶカモメをイメージして作りました。カモメは、ゆっくりと羽根を大きく羽ばたかせて飛ぶイメージがあり、そのイメージをもとに作りました。手元のハンドルをゆっくりと回すことで、羽根を動かすことができます。また、様々な種類の木を組み合わせて使うことで、色を表現しました。

【講評】
 ギアと平行リンクを組み合わせて、カモメがゆっくり羽ばたく動きの美しさが際立つ作品です。胴体部分は量感のある造形ですが、羽は、正面から見たメカニズムがシャープな造形でまとめてあり、機械の冷たさと、生き物の温かさという反対の要素をうまく調和させています。色の異なる木材がセンス良く使われており、ベース部分も、角材を組み合わせた強度と美しさを両立させたデザインが見事です。

名古屋女子大学教授 渋谷 寿

準グランプリ

作品名 / 丁髷(ちょんまげ)トリオ
氏名 / 水野 衣花(北海道)
使用樹種 / カツラ、サクラ、イエローハート

【作者コメント】
 丁髷(ちょんまげ)の回転玩具です。
頭にのった傘の柄の部分をつまみ、独楽のように回して遊びます。
気の抜けたような、くだけた雰囲気の玩具をと思い、この様なかたちになりました。

【講評】
 この作品には、今まで見たことのない発想にひかれた。タイトルの丁髷をちょんまげと読むことを知らなかった。三人の人物はたしかにちょんまげを結っている。すごい奇抜な発想だと思った。そのちょんまげに、何と番傘が逆さに乗っている。何だこの発想は!とまず引きつけられた。番傘から3本のひもが垂れている先に得体の知れない物がおもりの役目をして、番傘を回転させることができる。若い女性の作だが、うなりたくなるほど奇抜で面白い。

組み木デザイナー 小黒 三郎

優秀賞

   丹波市長賞 わたしの街でおかいもの 上原 雅子(京都府)

   丹波市議会議長賞 ダット/キュウソ 鈴木 智子(石川県)

   丹波市教育長賞 子熊の三輪車 我澤 愼一郎(大阪府)

新人賞

  (公財)兵庫丹波の森協会理事長賞  ログハウスパズル・森の家族たち 德田 一絵(東京都)

特別賞

  三木工業協同組合理事長賞  サウンド オブ ファミリー 久保 進(神奈川県)

佳作

   丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞 木でつなぐ 家族の絆 阿部 ??伸(北海道)

   丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 アルマジロのおもちゃ 藤原 均(岡山県)

   丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 【ヒノキノコ】 吉田 欣司(京都府)

学生賞

丹波市製材協会賞  ハシビロコウ木馬 村上 龍児(奈良県立高等技術専門校)

【作者コメント】
 動かない鳥で人気のあるハシビロコウを木馬にしました。よく動きます。
普通の木馬と異なり、鳥でしかも精悍な顔付きのハシビロコウ木馬は、子供も大人も楽しめるでしょう。
おもちゃの役目を終えたあとは、写真や花の台としても使えます。

【講評】
 「木育」の振興は本展の大切な使命です。学生として木工を本格的に学び始めることに年齢の壁など無いと知り一念発起後する人もきっとあると考え、推賞しました。今回の出展が学習成果の向上の弾みになりますように。

大阪教育大学名誉教授 水上 喜行


出展作品数は110点(内テーマ作品数は39点)、出展者数は108名


審査員

  【審査委員長】 小黒 三郎 組み木デザイナー
    渋谷 寿  名古屋女子大学教授
    水上 喜行  大阪教育大学名誉教授