第35回受賞作品 [ジュニアの部]

審査総評

 木材は伐採と加工を経て、生活雑貨や家具に生まれ変わっても、微量な水分を吸い込んだり、吐き出したり「呼吸」をし続けています。これによって、人は木材に「あたたかみ」「ぬくもり」時には「やさしさ」を感じるのではないでしょうか。このような素晴らしい素材を使った作品の出展数が昨年より多くなり、たいへんうれしく思います。そして、小学生においては学年に偏りがなく全学年から出展され、地域では地元丹波市内の学校が多く出展されて今後につながると思います。これも学校の先生方や保護者の皆様方のご協力があってのことだと思います。ありがとうございます。

 今年の作品も制作にかなりの労力をかけた末の力作が多く、また発想の豊かさに驚く作品も多数ありました。年々、小学生の発想力の豊かさ、中学生の加工技術の高さ、高校生の優れたアイデアとデザイン性に圧倒されます。

 ただ、発想や加工する力があるのに、最後の仕上げに少しガタつきがあったり、やや寸法が合っていなかったり、丁寧に磨きがやや欠ける作品もあって残念でした。今回の出展の作品で、もう少し最後まで調整し、スムーズな回転や滑らかな動きをさせたり、寸法もできるだけ合わせて接合したり、丁寧な磨くことをすれば、賞を取れる作品がいくつもありました。最後の仕上げも大切だと理解して欲しいものです。

来年も木の素材を生かし、個性豊かでワクワクする遊び心を感じる作品を期待したいと思います。

元西宮市中学校校長 岡本悦司

グランプリ

グランプリ(文部科学大臣賞)
受賞者 大森 春菜(丹波市立氷上中学校1年生)
作品名 恐怖?のさまようゆうれい船

【作者コメント】
 あらすじ… 最近うわさになっているゆうれい船の調査に入った探検隊の前でおこる怪奇現象。でもそれだけじゃおわらず、、、

【 審査講評】
 今回で5回連続のグランプリ受賞となりましたが、回を重ねるごとにテーマ、スケール、完成度のすごさに審査員一同驚かされています。しっかりとしたストーリーを作り、それを的確に形として表現する力は、年齢をはるかに超えたものがあります。大作でありながら、細部まできっちり作り込んであり、部分ごとの材料の使い方も的確です。構想から完成までかなりの時間をかけているのが一目で分かります。

 また、今回初めてカラクリ仕掛けを取り入れていますが、そのことでよりダイナミックな作品になりました。ただ、あまりにもストーリーが複雑なため、少し詰め込み過ぎの印象もありました。

彫刻家 磯尾 隆司

準グランプリ

準グランプリ(兵庫県知事賞)
作品名 とろ~りチーズの具だくさんピッツァ~スツール仕立て~ 
受賞者 小峯 茉莉(埼玉県立越生高等学校3年生)

【作者コメント】
 この作品は色の違う7種類の木材を使って制作しました。どの木材も硬く、座面部分の象嵌は特に難しかったです。チーズの脚も納得がいくまで何度も削り、木くずまみれになりながらも楽しく制作することができました。仕上げはプレポリマーを使い、「木」本来の色を楽しめるようにしました。具材のピーマンとオリーブは、パロサントと黒檀という木材です。この2つの木材は緑色、黒色の珍しい色をしているので是非ご覧下さい。

【 審査講評】
 この作品を見て、最初に目についたのは座面の象嵌です。象嵌は、くり抜いた基板に同じ形の別種類の木材をピッタリ嵌めこむ技法ですが、この作品では数種類の木が適所に嵌め込まれていてピッツァの具を表現しています。
また、加工の難しいピッツァの縁にあたる曲線部分や溶け落ちるチーズを表した脚部分も綺麗に仕上がっており、苦労しながらも時間をかけて丁寧に作られたことがうかがえます。
作品名の「とろ~り・・・」の意味が最初は不明でしたが少し離れて見ると、ピッツァのチーズがとろ~りと溶け落ちている様子を脚も含め全体で表現していることが見て取れました。
チーズの溶け落ちるピッツァをスツールとして形にするという発想の豊かさとユニークさに敬服させられた作品です。

玩具作家 濱田 昭文

準グランプリ

準グランプリ(兵庫県知事賞)
作品名 ハイプテラ(廃ブリッドプテラノドン) 
受賞者 升川 旺祐(西宮市立津門小学校2年生)

【作者コメント】
 大人の部が「とぶ」というテーマだったから、ぼくもとぶなにかを作ろうと思った。本当ははねをうごかしかったけど、むずかしかった。つぎは、どううごくのか考えてみたい。ながしそうめんの竹のけずりかすを見てすのなかみにしようとひらめいた。おじいちゃんやパパにてつだってもらった。すのかごはおばあちゃん手づくりです。

【審査講評】
 この作品は廃材を利用して作られており、作者が廃材の中からイメージにあった形のものをワクワクしながら選んでいる様子が想像できます。廃材はゴミとして捨てられることが多いですが、子どもにとっては宝物なのかもしれませんね。
 また、選んだ廃材が適所にうまく使われており、翼の広げ具合やくちばしの長さなど全体的にバランスがよく、のびのびとした作品に仕上がっています。なお、目にビー玉を使ったところは効果的ですが、卵に使われている発泡スチロールの既製品はこの作品には合わないので、手づくりのもの、できれば木製にすれば更に効果的な作品になります。
 前回に引き続く入賞ですが、技術力や表現力が向上しており意欲的に制作されたことが感じられます。今後もいろいろなものをイメージし、作品として形に現わしてほしいと思います。

(玩具作家 濱田 昭文)

優秀賞

  丹波市長賞  植筆鉢  松井 玲(東京都立工芸高等学校3年生)

  丹波市議会議長賞  ひのぶたスツール  蘆田 珠英(丹波市立南小学校5年生)

  丹波市教育長賞  白川郷のやね  荻野 朔 植木 陸斗(丹波市立黒井小学校3年生)

特別賞

  三木工業協同組合理事長賞  ログハウス  河南 昂(丹波市立崇広小学校3年生)

佳作

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  three tree House 升川 凛桜(西宮市立津門小学校6年生)

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  カブクワガタちょきんばこ  三方 奏(丹波市立崇広小学校2年生)

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  plain 渡辺 清花(東京都立工芸高等学校3年生)

学校賞

  (公財)兵庫丹波の森協会理事長賞  丹波市立崇広小学校

館長賞

  兵庫県立丹波年輪の里館長賞  木のいす  楠 真生空(丹波市立黒井小学校2年生)


出展校数:20校/出展作品数:111点(123名)


審査員

【審査委員長】 磯尾 隆司(彫刻家)

       岡本 悦司(前西宮市中学校校長)

       濱田 昭文(玩具作家)