第37回受賞作品 [ジュニアの部]

審査総評

今回は217点の作品の出展があり、昨年と比較し89点の大幅増加で、近年にない多さでした。

行き届いた広報や学校の先生、指導者、保護者の方々のご協力があっての結果だと思います。改めて感謝いたします。

審査員にとって、多くの作品の中からより優れた作品を見い出すのは結構難しい作業です。審査は、木の素材を活かした作品であること、遊び心を感じさせる作品であることに重点をおきますが、作品を通して作者それぞれのアイディアや遊び心が見えてくるのでとても悩ましいものです。しかし、いろんな作品と対面することができて楽しい作業でもありました。

ところで、私は山歩きや森などの自然観察を趣味としており、自然はアートそのものであり、作品づくりに必要なアイディアがたくさんちりばめられているのを感じます。 

本来、子どもたちは自然の中での遊びやふれあいを通して様々なことを学びながら成長していくものだと思います。しかし、近年は気候変動による猛暑などの影響もあって屋外での活動が少なくなり、バーチャルの中での遊びが多くなっているように思います。

本展は、そのような眠っている子ども達の可能性を目覚めさせてくれる場所でもあります。今後も子どもたちが環境の変化に飲み込まれることなく、独創的で遊び心あふれる作品を作り続けてくれることを願っています。

玩具作家 濱田 昭文

グランプリ
※画像は後日差し替えます。

グランプリ(文部科学大臣賞)
作品名 木とカラクリのくるみ割り人形
受賞者 矢吹 陽(東京都立工芸高等学校 3年生)

〔作者コメント〕 

パーツが多く、徐々に組み立てる時が、パズルをやっているみたいで楽しかったです。また、ハンドルを回した時に、きれいにカラクリが動いたことに達成感を感じました。

シンプルな動きながら、それまでの歯車や昇り降りするパーツの動きをあえて見せることで、小さい子供たちでも、ワクワクを感じながら遊ぶことができると思います。

[審査講評]

カラクリのくるみ割り人形という名と全体の色合いの良さ、また円柱と角柱のみのシンプルですっきりした作品に目が留まりました。よく見れば色は木材の種類で変えてあり、つくりもしっかりしていて正確に作られていると感じました。では動きはと期待しながら、くるみを台に設置しハンドルを回転させると気持ちよく、くるみが2つに割れました。これを数回繰り返しても同じようにスムーズに回転し、正確にくるみが割れることに感心しました。

回転を伝える機構にかさ歯車を取り入れ、より簡単に制作できるピン歯車を採用しています。これは手加工でも制作しやすく、正確な動きを生み出せることでこのカラクリ人形が成功したようです。このようにカラクリの一番の見どころは、毎回スムーズな動きで、ワクワク感たっぷりの作品に仕上げられているかどうかということです。

(元西宮市中学校校長 岡本悦司)

準グランプリ
※画像は後日差し替えます。

準グランプリ(兵庫県知事賞)

作品名 からくりサーカス場 

受賞者 大森 春菜(丹波市立氷上中学校 3年生)

〔作者コメント〕 

オープンしたサーカス場。ゾウやライオン、ピエロなどと楽しい劇にたくさんの観客。あれ、見おぼえのある人たちが‼

過去作から登場、恐怖の探検隊シリーズより探検隊9人、海賊11人、アンデルセン人形1体、十二支のゆらいより神様1体、妖精のロケット工場より妖精1体。探してください。

からくり中心だったのでからくりをおく場所が難しかったです。

[審査講評]

この作品は、サーカス場の中央にゾウやライオンなどのカラクリが、周囲には観客席が配置されており、小物も多く大屋根も付いているという大がかりなもので、随所に工夫が施されており創造力の豊かさが感じられます。

また、このサーカス場は円形であり、加工が難しい曲線部分も綺麗に仕上がっていますし、細かなパーツもひとつひとつが丁寧に作られており技術力の高さも感じられます。

なお、スケールの大きな作品で見どころも多くありますが、詰め込み感があるので、ポイントを絞り、全体的にシンプルな仕上がりにすると更に魅力的な作品になると思います。

(玩具作家 濱田 昭文)

準グランプリ

準グランプリ(兵庫県知事賞)

作品名 ゾウと小さき者たち 

受賞者 吉田 万智(大阪府立工芸高等学校 3年生)

〔作者コメント〕 

からくりの動きを使い、ゾウと小人たちの様子を可愛らしく表現できるように制作しました。

歯車や糸車のパーツを一つ一つ作り上げるのが難しかったですが、からくりの仕組みについてより理解を深めることができました。

[審査講評]

作品の大部分が円や曲線で構成され、優しい印象を受けました。どの部品もきっちりとていねいに作ってあり、歯車の動きもスムーズです。歯車に通してあるひもも、太さが不ぞろいで、自身で編んだのだと思いますが、徹底して手作りにこだわっている点も評価しました。

タイトルに「ゾウ」と付けていますが、かなり抽象化された形状で、色々と想像がふくらみます。淡い黄色の着色により、暖かみやどこかノスタルジックな印象も受けました。

(彫刻家 磯尾 隆司)

優秀賞

  丹波市長賞 「パワフルバランス」 市村 優羽(東京都立工芸高等学校 3年生)

  丹波市議会議長賞 「メリーゴーランド」  本田 千畝(西宮市立塩瀬中学校 3年生)

  丹波市教育長賞 「イルカのわなげ」  濱田 穂乃華(横須賀市立浦賀小学校 3年生)

特別賞

  三木工業協同組合理事長賞 「からくりメリーゴーランド」  小川 陽菜(飛鳥未来高等学校 1年生)

佳作

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞 「キツツキ コンコン」 宇野 陽(丹波市立黒井小学校 3年生)

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  「木造ごみ箱」  榮井 ひな(丹波市立青垣中学校 1年生)

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞 「ガブスト」 足立 統真(丹波市立青垣中学校 1年生)

学校賞

  (公財)兵庫丹波の森協会理事長賞  秋田県立能代支援学校

館長賞

  兵庫県立丹波年輪の里館長賞 「かっこいいビル」  松本 龍征(姫路市立大津小学校 2年生)


出展校数:22校/出展作品数:217点(231名)


審査員

【審査委員長】 岡本 悦司(元西宮市中学校校長)

       磯尾 隆司(彫刻家)

       濱田 昭文(玩具作家)