第36回受賞作品 [一般の部]

審査総評

今回の公募展は、18歳から88歳までの幅広い年齢層の応募があり、コロナ禍以降最も作品数、出展者数、そして初出展数、更に学生さんの出展も多く、主催者側として大変嬉しく思っております。

また、今回のテーマ「バランス」作品もコロナ禍以降最も多く、テーマを設定することで、作品の方向性を見つける手助けになるという意義も確認できました。次回も更に多くの方々に参加していただきたいと思っております。

例年の受賞作品のデザイン、機能、技術面などは一定の高度なレベルに達していますが、特に今回は、今までにない豊かな発想の作品が目を引きました。そこには多様な価値観が表現されており、審査会では、作品を動かし、遊びながら楽しい時間を持つことができました。

次回テーマ「ゆったり」についても幅広く解釈をしていただき、イメージを広げ楽しく温かい作品を期待したいと思います。

名古屋女子大学教授  渋谷 寿

テーマ評

今回の指定テーマ「バランス」は、作品イメージを広げやすかったようで、応募作の4割がテーマに沿った作品でした。なかでも、“力学的バランス”に焦点を当て、ヤジロベエのように揺動させるもの、倒れないように走らせたり回転させたりするもの、不安定な台の上に崩れないように物体を乗せたり積み上げたりするものなど、平衡を保つ遊びに特化した作品が多く見られました。また、ラビリンスゲーム(迷路遊び)のように、平衡状態を移行させながらビー玉を目的地へと向かわせる楽しい作品も目立ちました。グランプリ作品はラビリンスゲームや玉転がし玩具の素晴しき発展型です。

一方で、バランスという言葉には、平衡、均衡、釣合に加えて、調和といったニュアンスも含まれるため、力学的バランスを人間同士、人間と社会、人間と自然などの相互関係に託して、作者の哲学や人生が表現できたのではないでしょうか。応募作のなかには、台風で折れた桜の枝を削った一対の瓢箪形を倒れないようバランスよく寄り添わせ、そこに長年連れ添った老夫婦の姿を託するという小作品があり、“ほっこり”させられました。

次回のテーマは「ゆったり」です。夢や人生観をほのぼの、ゆっくり、ほっこり表現する作品を期待しています。

日本玩具博物館学芸員 尾﨑 織女

グランプリ

グランプリ 文部科学大臣賞
入賞者:安森 優(山口県長門市)
作品名:探検ゆらゆら海賊船

使用樹種/桧、ウォールナット、杉

【作者コメント】

迷路になった船内をスタートの見張り台からゴールの小船へ、コロコロと玉を転がしていきます。2人から4人での協力作業が必要なおもちゃです。船首と船尾、または右舷と左舷など持つ場所や人数で難易度が変わります。最後まで気を抜かず、相手と息を合わせながらゴールを目指そう!

【講評】

2〜4名が協力し、船の甲板に施されたコースに球を走らせ救命ボートに導くゲーム。荒波を超え、今にも沈みそうなイメージを与える迫力ある動きには物語性を感じさせる。ラビリンスのコースはよく考えられていて楽しいしゴールが救命ボート(本船がアクシデント?)というのも面白い。デザインはうまくまとめてありヒノキとウォールナットの使い方バランスも良い。船の重量は少し重いと感じたが、数名で安定的にゲームをするには丁度良いのかも。

プロダクトデザイナー 中井 秀樹

準グランプリ

準グランプリ 兵庫県知事賞
入賞者:佐藤 敏男(埼玉県鴻巣市)
作品名:走れ輪太郎

使用樹種/タモ、チーク、カリン、黒檀、竹、Oリング

【作者コメント】

自転車はバランスの乗り物ですが、実は誰も乗らなくても走る乗り物なんです。モータも何もついていません。手で勢いよく前に走らせてみてください。スピードが無くなると倒れてしまいますが、バランス自転車はみんなで楽しめます。

【講評】

造形的にも美しい自転車の作品です。バランスを意識し勢いよく押し出すと、思いの他、かなりの距離を走らせることができ、何度も挑戦したくなり楽しめます。

タイヤ部にOリングをうまく使って、カーボン製のレーシングバイクを思わせるフォルムになっています。ハンドル上に鎮座するのは瓜坊でしょうか。このユーモラスな違和感も楽しい作品です。

名古屋女子大学教授  渋谷 寿

優秀賞

  丹波市長賞 MUCO 安森 弘昌(兵庫県神戸市)

  丹波市議会議長賞 宇宙の飛行士 おっとっと  大森 恵(兵庫県丹波市)

  丹波市教育長賞 なつかしのボンネットバス 橋本 澄夫(広島県東広島市)

新人賞

  (公財)兵庫丹波の森協会理事長賞  にょきにょきしめじ 中村 祐人(横浜国立大学 教育学部)

特別賞

  三木工業協同組合理事長賞 RiPPO  石橋 陽稀(ものつくり大学 技能工芸学部建設学科)

佳作

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞 ツムツム君  久保 進(神奈川県伊勢原市)

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  さんぽ 大森 栄司(兵庫県丹波市)

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞 グリーン・グラス・ダーツ 松澤 政彦(大阪府富田林市)

学生賞

  丹波市製材協会賞  からくり宝箱  荒井 一冴(金沢科学技術大学校 家具クラフト学科)


出展作品数は80点(内テーマ作品数は33点、親子で遊べる木のおもちゃ作品13点)、出展者数は73名


審査員

【審査委員長】   渋谷 寿    名古屋女子大学教授
         中井 秀樹   プロダクトデザイナー
         尾﨑 織女   日本玩具博物館学芸員