第35回受賞作品 [一般の部]

審査総評

今回は、「親子で遊べる木のおもちゃ作品部門」が新設された、記念すべき公募展になりました。出品作品は、高度な加工技術が目を引くものより、子どもへの優しい眼差しが感じられる、シンプルで丸く温かいフォルムのものが多かったように思います。
もう一つのテーマである「とぶ」に関する作品は、「とぶ」についての様々な解釈による創造性あふれる作品が多く集まりました。
また、最近の時代に合致する、ICTと木を組み合わせた作品も登場しました。子どもの遊びの世界も、ICT 化は進行するでしょうが、対極にあるとも言える、木を使った手づくりの重要性は今まで以上に高まるでしょう。その意味で、毎回出品されている最高齢87歳のベテラン出品者の創作エネルギーには脱帽です。また、18歳という若さあふれる作品や、木のものづくりへの思いが忘れられずに挑戦された出品もあり、今後も幅広い年齢層の方々に挑戦していただきたいと思います。
次回も「親子で遊べる木のおもちゃ作品部門」は継続し、新たなテーマは「バランス」としました。様々な解釈の作品を期待したいと思います。

名古屋女子大学教授  渋谷 寿

テーマ評

アイデアがイメージしやすいテーマ「とぶ」なので、躍動感溢れる作品を期待していたが、意外に優しく穏やかな作品が多く見られた。飛行機、鳥など空を飛ぶことを意識したもの、飛ばし方にこだわりを感じるもの、飛躍することを感じさせる作品などどれもフムフムと感心させられた。中でも紙飛行機をすっ飛ばしたり、指定テーマではないが、サンドバギーの舞い飛ぶ姿の圧巻さなど、審査員を夢中にさせ楽しませたダイナミックな作品もあった。
全体の作品を見ていると「親子で遊べる木のおもちゃ作品」部門の新設が、子供と遊んでいる状況を想像することで、アイデアが出しやすいきっかけになったのではないか?そんな印象を持った。親子で一緒に考えて作ることで、新しいスタイルの遊びの発見に繋がっていくことに期待したい。
次回のテーマは「バランス」このテーマもイメージしやすいが今回以上に範囲が広い。社会環境問題から日常生活の細かな出来事など絞り込み方でとても面白くなってゆくテーマだ。何処に焦点を持って来るか?が大きな課題となる。

プロダクトデザイナー 中井 秀樹

グランプリ

グランプリ 文部科学大臣賞
入賞者:神谷 孝弘(埼玉県新座市)
作品名:MOKU-Model LET'S JUMP!
使用樹種/玩具本体:ウォールナット、ブナ コース:コルク

【作者コメント】

無垢の質感と、アクションを追求した木製作品。本体は飛ぶ・走る・回るを得意とする競技車両をモチーフとし、親しみやすい丸みのある形状を採用。親と子のように、大・小2つのサイズを用意し、大きさ・重量からの走り方の違いも楽しめる。走行面ではサスペンション(バネ)を内蔵することにより、路面からの衝撃を吸収。コースは一定の規格を設けることで、組み合わせ次第でジャンプ台・橋・トンネルへも変化する。大きなジャンプやバック転。自分だけのアクションを見つけて競い合う。五感で遊べる、アクション型木製玩具の提案。

【講評】

大きな車輪のバギーをテーマにした走らせることを楽しむ作品です。サスペンションをそなえた、しなやかな下回りの機能と、ボディーとホイールの美しいフォルムが目を引きます。このサスペンションのおかげで、ダイナミックな走りと、意表を突く宙返りなどの荒技が楽しめます。

様々に組み合わせることのできる、コルクブロックから切り出されたスロープのデザインや仕上げも見事です。デザイン、機能、加工技術等が見事にバランスが取れています。

名古屋女子大学教授  渋谷 寿

準グランプリ

準グランプリ 兵庫県知事賞
入賞者:佐橋 刻(愛知県名古屋市)
作品名:カタムキオバケ
使用樹種/ブナ、シナ、パドック、アガチス

【作者コメント】

小学校教員として働きながら「木工×スマートフォン」というテーマで子どもたちを楽しませる作品を製作しています。

この作品は、元からスマートフォンに入っている水平計測アプリを活用しています。傾きによって目玉やまぶたの位置が変わりますので、ぜひ手に取って遊んでみてください。

小学生の子どもたちも「この顔面白い!」「目玉の位置を上手に合わすのが難しい」などと言いながら教室で作品に触れています。

【講評】

常日頃から見ている事物を参考にアイデアを考えることはよくあるが、この作品は誰もが気がつきそうだが、なるほどー!と思わせる。

本体を傾けると、傾きを計測してくれる画像の変化が目の動きに見える、シンプルだが遊び心満載の作品だ。スマートフォンの画面の動きを見事に利用している。デジタルだけどアナログな作品だ。デジタル中心の現代に「これで良いのかな?」と問いかけているようにも感じる。

一言、オバケの手(持ち手)と体のつながり部をRにするともう少し優しいデザインになる。傾けるとベロが動いたら良いかも。

プロダクトデザイナー 中井 秀樹

優秀賞

  丹波市長賞 からくりアニマルズ 島本 契司(兵庫県宍粟市)

  優秀賞 しゅっぱ~つ 丹波市議会議長賞 大森 栄司(兵庫県丹波市)

  丹波市教育長賞 フライスピッツ 平良 勇(沖縄県沖縄市)

新人賞

  (公財)兵庫丹波の森協会理事長賞  パズルきかんしゃ 安森 優(山口県長門市)

特別賞

  三木工業協同組合理事長賞 祝!福来たる  津田 敏幸(兵庫県加古川市)

佳作

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞 おにぎりガラガラとなかまたち(ウマさん、ゾウさん)  川﨑 忍(京都府亀岡市)

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  木工ジオラマ うさぎ村村営森林鉄道 松澤 政彦(大阪府富田林市)

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞 木製重層ジグソーパズル「日本昔話(甲・乙)」「西洋昔話(AB)」 髙橋 慧、横田 咲樹、馬場 湊(岡山県岡山市)

学生賞

  丹波市製材協会賞  バンクレーン  齊藤 孝(中央工学校)


出展作品数は73点(内テーマ作品数は23点、親子で遊べる木のおもちゃ作品16点)、出展者数は63名


審査員

【審査委員長】  渋谷 寿    名古屋女子大学教授
         中井 秀樹   プロダクトデザイナー
         尾﨑 織女   日本玩具博物館学芸員