第15回受賞作品 [一般の部]
審査総評
学び合いの場としてのコンクール
「丹波の森ウッドクラフト展」は、今年で15回を迎えました。
これほど回を重ねて支持されるコンクールは全国的にも稀だといわれており、主催関係者としても実に喜ばしいかぎりです。
その理由は何と言っても、この公募展が掲げ続けてきた趣旨のユニークさによるものでしょう。「集合!遊・戯・木のぬくもり」には、他のクラフト展にはない、楽しさと、優しさ、そして健やかさの響きがありました。そこに新しいクラフトを予感し共鳴する仲間が集まり、その輪が着実に広がってきたからといえましょう。これからも皆さんとともにこの輪がさらに大きく育んでいきたいと思います。
さて今年も審査会場に多くの力作が集合しました。いずれの作品もそれぞれに見逃せぬ良さがあって、審査のたびに思うことですが、できることなら審査員だけの場でなく、出品者全員が集い、自作を手に自慢し合い、他の良さを認め合いながら互いが学び合えると、どんなに充実した場面になるだろうと想像します。
「コンクール」の社会的な意義も変わりつつあります。近年は、以前のような専門作家の登竜門としてだけでなく、あらゆる参加者に開かれ、生涯にわたる学びの場としても役目をはたしていることが、出品者が幅広い年齢層や職種に及んでいる傾向からもわかります。
「コンクール」は一般に「公募による作品審査」を指すフランス語ですが、この語の本来の意味とされる「交わり」や「参加」も今あらためて問い直してみる必要がありそうです。
次の第16回展からテーマ部門を設ける方向で検討が進められています。そのねらいは、ただ単に受賞の報待ちの出品に終わるのではなく、共通のテーマをめぐり技能や構想を競い合うことによって、展覧会で他作品とめぐり会うことが楽しみになるような、つまりお互いの学び合いの場としてのコンクール、出品者自身の参加が実感できるようなコンクールを皆さんとともに創り上げたいということにあります。
「丹波の森ウッドクラフト展」の新たな試みです。
来年もまた奮ってチャレンジされるようお待ちしています。
一般部門審査員 水上 喜行
(大阪教育大学教授)
グランプリ
作品名 / 白の馬、白の鳥
氏名 / 加藤 清克
【作者コメント】
おもちゃではなく、動くインテリアクラフトである。制作意図は、なごみの空間。
それぞれの棒の先端に馬・鳥を差し込みセットアップ。基の円錐の部分を持ち、円盤状のオルゴールを巻き上げ、そっとテーブルに置く。馬は地を、鳥は空を高低を繰り返しとび回る。
進行方向の障害物に注意。取り扱いはやさしく。
【講評】
デザインは単純化という操作が必然的にともなうものであるが、この作品の美しさはひとくちに言えば、「シンプルな形、シンプルな動き」にあると思う。オルゴールを円筒形の箱に納め、テーブルと台に転がすだけのシンプルな仕組みによって、鳥や馬を動かしている。そのスローモーションのようなゆるやかな動きに、心がなごまされるのだ。動物の曲面を生かした板作りや、樹種の変化も美しく、技術的にもしっかり作られている。今までのグランプリの作品中、最も単純な形のもの故、製品化が可能である。作者は、かつてデザインフォーラム展(松屋銀座)で、紙製による動くゴリラの作品でグランプリを受けたが、今回は木の素材を生かして、なごみのある空間を作り出した。
小黒 三郎(組み木デザイナー)
準グランプリ
作品名 / カンブリアン
氏名 / 松本 悦男
【作者コメント】
古生代カンブリア紀には、現在化石で確認されている生物以外にも、不思議な生物がいたはずです。その中にこんなプロペラを使って泳ぎまわる生き物もいたかもしれない?風が当たるとプロペラが回り、ヒレが動きます。
【講評】
想像上の動物、カンブリアンは身体全体が風を待ち変化を起こす。用いられている様々な材種、積層化しての使用、各パーツの形の多様さとその上に施された象蕨。造り込まれた部分があってこその全体、ということをよく踏まえた造形である。かつてのウイリーギク(風見鶏)は日常生活の一コマを題材にしたが、現代版のそれは古生代から現代へ流れる風の中で遊ぶ作者の心を題材にする。作者の創造力と丁寧な造形が発する衝撃力が私達を魅している。
奥田 実(木工芸家)
優秀賞
柏原町長賞 ドン・木ホーテ2002 村上 章
柏原町長賞 綱渡り人形 竹田 慎一
柏原町長賞 Clowood 仲西 太
奨励賞
氷上町長賞 丹波の四季(春・夏・秋・冬)弁当 大森 栄司
青垣町長賞 キッシーくん 上杉 裕一
春日町長賞 楽しいな、遊園地 村井 中
山南町長賞 組み具 河野 一郎
アイディア賞
市島町長賞 ちいさな幸せ 神野 克昭
丹波の森協会理事長賞 影もハクチョウ 外村 憲平
兵庫県勤労福祉協会理事長賞 木馬のともだち 眞澄 修
兵庫県勤労福祉協会理事長賞 いないいないばあー 横山 瞳
丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 魔女とねこのキューブ 小松 強志
特別賞
丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞 歩く語り部たち 京都府聴覚障害者協会舞鶴支部
出展作品数は85点、出展者数は77名
審査員
兵庫教育大学名誉教授 日野 永一
【審査員長】組み木デザイナー 小黒 三郎
大阪教育大学教授 水上 喜行
木工芸家 奥田 実
木工専門誌編集者 小田桐 充