第18回受賞作品 [一般の部]

審査総評

「もの作りによって、生きる活力を」

 板を曲げて食べ物の容器などを作る、輪っぱ、曲げ輪っぱの伝統技法があります。昔は弁当箱などによく使われましたが、今はアルミ製の量産品に押されて、これを使う人が少なくなりました。製品が売れなくなれば、日本の伝統的な木工技術を受け継ぐ人が減り、その結果、地場産業も衰えてゆきます。

 最近、組み木のお雛さまや武者人形を組んで収納する容器として、楕円形の容器が必要になり、曲げ輪っぱをオリジナルな形で注文制作しました。五段飾りの容器だと5ヶが重なる曲げ輪っぱが必要になり、かなりの量を注文して制作業者から喜ばれました。届いた製品の出来映えを見るにつけ、親から子へと継がれてきた日本のハンドクラフトの巧みの技を、廃れさせてはいけないと思いました。

 秋田では杉、木曽では桧と、その地方で生産された国産材を生かして作られている曲げ輪っぱの、両方を組み木の容器として注文制作してゆくことで、多少なりとも、曲げ輪っぱを作る人たちの応援をし、協力をしてゆきたいと思ったものです。

 丹波の森ウッドクラフト展は今年で18回目を迎えました。木のもの作りの裾野を広げてゆくことが、この催しの大きな目的です。手を使ってものを作ってゆく喜びは、生きる活力へとつながってゆくことでしょう。その活力が、日本の手の巧みの伝統を受け継いでゆくエネルギーになると同時に、今の時代の閉塞を打ち破る力となることを信じて、私自身もデザイン活動に専念したいと思います。

一般の部審査委員長 小黒 三郎
(組み木デザイナー)

グランプリ

作品名 / マキシ
氏名 / 加藤 克俊
使用樹種 / メープル

【作者コメント】
 螺旋をテーマに作り続けてきた作品群の中の一点がこの作品です。 土台の円盤をタイミングよく押すと、作品が円運動をします。 ハンマーが柱を順に叩き、右回り左回りで異なる音を奏でます。

【講評】
 審査員こぞっていろんな観点から高い評価がよせられました。
 まずは作品の音色です。小川のせせらぎのようにも、また虫の音のようにも奏でられる音色は優しく、そして音質にはゆとりすらある、と異口同音に感興が示されました。また素材についても、弾み車、槌(つち)、枹(ばち)、と構造の各部それぞれに適した重さ、色、かたさなど、樹種の選択がじつに巧みであると評されました。

さらに、なによりも、人の姿や動物など具象のフィギュアーに頼らず機構の生硬さを解消しようとする独自のからくり手法、そして簡素な構造が生み出す動きと音律とが相乗し、調和し、手と目と耳にここちよい感覚をあたえてくれる独特の表現など、作者がめざす表現世界が出展のたびに着実に実現されてきていることが今後一層の進展を期待させ、全審査員の推賞を確実にしたといえます。

一般の部審査委員 水上 喜行
(大阪教育大学教授)

準グランプリ

作品名 / 動かせる組み木の十二支屏風
氏名 / 守重 シゲ子
使用樹種 / ブナ、トチ、アカチズ、ホウ材

【作者コメント】
 組み木のデザインの中に円を使うことで、回転させ動かせるようにしました。これにより、動物たちの手足が動き、動作や姿まで変わります。子供たちがぬいぐるみのように手に取ってお話をしながらさまざまなレイアウトをして遊ぶことのできる「動かせる組み木」にチャレンジしてみました。また十二支を屏風にしてまとめたので動物を抜き出して前に飾っても楽しいインテリアになります。

【講評】
 家族的なイメージで組まれた十二支の動物組み木です。それだけなら新鮮味はないですが、動物の足や首などの付け根を円形に挽くことで、動かせる工夫をし、更に屏風に仕立てたところが斬新です。
 普通、組み木は木片を寝かせて机上で組みますが、これは屏風の垂直面に組む木片の順序の工夫が必要です。樹種を変化させて、一部の木片を着色した配色も美しい。遊び手の想像力を促し、新しい十二支の物語が生まれそうな屏風組み木となりました。

一般の部審査委員長 小黒 三郎
(組み木デザイナー)

優秀賞

  丹波市長賞  ウォッ(魚)!! たのし~ 大森 栄司
  丹波市議長賞  特産 丹波のそっ栗  鈴木 信太郎
  丹波市教育委員会教育委員長賞  手つなぎブロック  古川 英樹

アイディア賞

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  ホタルの乱舞  湯元 桂二
  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  ハンドコースター “ゆっくりならできるよ”  横山 薫
  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  からくり箱  丹治 順一

奨励賞

  兵庫県芸術文化協会理事長賞  光のぬくもり  村口 要太郎
  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  ランプ  岩田 望美
  財団法人丹波の森協会理事長賞  コモレビ  鶴田 友道

キャラクター賞

  丹波の森ウッドクラフト展審査委員長賞  おじさんと怪魚のやじろべえ  三箇 絹代

スキル賞

  丹波の森ウッドクラフト展審査委員長賞  とびだす くだものずかん・とびだす やさいずかん・とびだす むしのずかん(3点セット)  横山 広
  財団法人丹波の森協会理事長賞  ハリハリボウ  三河 克哉

パワフル賞

  兵庫県勤労福祉協会理事長賞  鉄球果樹  神田 修


出展作品数は83点(内テーマ作品数は28点)、出展数は75名


審査員

【審査委員長】小黒 三郎  組み木デザイナー
小田桐 充  雑誌編集者
橋田 裕司  照明デザイナー
日野 永一  兵庫教育大学名誉教授
水上 喜行  大阪教育大学教授