第22回受賞作品 [一般の部]
ようやく始まった「木育」
日本には古くから、日常生活の中で木材を上手に利用する「木の文化」が形成されてきた。しかし今日、木材製品を意識して利用する機会が減少している。そこで林野庁は「木育」という言葉で人と森林とのつながりを考え、木材利用の意義を学ぶ教育活動を進める重要性に着目し始めている。
「木育」という言葉を初めて聞いたのは北海道の木の玩具作家たちからで、一昨年頃からだった。今では大学の教育学部の教授あたりから、この言葉をよく耳にする。
この1年間、韓国の山林庁の傘下にある木材文化フォーラム(WCF)の招きで、木工指導者を養成する講習会に、組み木を教える講師として、三回も出向いた。韓国でも、ソウル大学の森林科学の教授を中心に、「木育」の活動が、国の予算のもとに、昨年あたりから具体的に始まっているのを知った。全国規模で木工指導者を養成する企画は、残念ながら日本ではまだ実施されていない。
丹波の森ウッドクラフト展は子どもと大人の為に、22年も前から「木育」の活動を具体的に進めてきたのだと、改めて思った次第である。
組み木デザイナー 小黒 三郎
グランプリ
作品名 /追っかけカラコロ
氏名 / 小原 孝志
使用樹種 / ナラ、コクタン、シタン、ケヤキ、タガヤサン
【作者コメント】
「追っかけコマ」が木の持つ響きを奏でます。周囲に樹種や大きさの異なる木片を並べた円盤の中央にある、ハンドルを回すと大きさや厚みの異なるコマがリズムを奏でながら「追いかけっこ」をします。何回も回してください、立っちして休憩するコマが現れます。
【講評】
中央の大きなコマを回すと、周りの小さなコマが互いに競い、追っかけっこをする。時には前のコマを追い越すこともある。その原理は江戸の「追いかけ独楽」に見られるものですが、まわりの木琴が微妙な音を奏でたり、途中で一休みするコマがあったりで、小原さんの工夫が随所に見られます。そして何よりも、木の美しさを生かした、精巧な工芸品とでも言うべきその作りが大きな魅力となっています。ただ長方形の台やコマの収納箱の形など、全体との調和をもう少し意識したら良いかと思います。
兵庫教育大学名誉教授 日野 永一
準グランプリ
作品名 / ありんこ競争曲
氏名 / 田川 剛
使用樹種 / 杉
【作者コメント】
子供が弾いているピアノからヒントを得ました。
鍵盤の上にアリに見立てたボールをつないだものを置いて、ピアノを弾くように叩くようにすると、リズミカルに弾み移動します。
※材料は、建設現場で廃材として処理される物を使用しました。
【講評】
一定の動きをする玩具は飽きられやすいですが、この作品は、鍵盤のたたき方によって、蟻に見立てた連結した球が異なる跳ね方をして楽しめます。この、玩具としての本質的な要素を持っている点が評価されました。親子で向かい合って競って遊ぶこともでき、子どもの目線を大切にして制作された愛情を感じさせます。材料は建築廃材が使用されておりエコの観点では評価できますが、作品にするには板の厚さ・重さを吟味したり、意味のある構造やデザインにする試みが求められるでしょう。今後の発展が期待できる新人の作品です。
名古屋女子大学教授 渋谷 寿
優秀賞
丹波市長賞 ババリアン・レントラー 鈴木 智子(共同制作者/大蔵 俊彦)
丹波市議長賞 ヌーヌー 平良 勇
丹波市教育長賞 ころころ tree ちゅうりっぷ 松本 吉和
新人賞
(公財)兵庫丹波の森協会理事長賞 FUN BIRD 麻生 強
佳作
丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 手に手つないでワンワールド 松澤 政彦
丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 夢ゆらり 大森 恵
丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 コロニー 三河 克哉
出展作品数は65点(内テーマ作品数は24点)、出展数は58名
審査員
【審査委員長】 小黒 三郎 組み木デザイナー
渋谷 寿 名古屋女子大学教授
日野 永一 兵庫教育大学名誉教授