第27回受賞作品 [一般の部]
審査総評
工作、工芸などの「工」。この字は中国の古い字書では、次のように説かれています。
「二」は天と地、そして上下をつなぐ「|」は人。人が天地の間にあって、正しい仕事をすることだといいます。私はこれを次のように解釈しています。つまり天の恵み・摂理を正しく(サシガネのように正しく直角に交わっています)受取り、人がいろいろ工夫をして作ったモノで、地上に幸や喜びを与える意味だと。
ウッドクラフト展も、深くこの精神を現しているのではないかと思います。木という自然の恵みによる素材を、適切な技術によって新しい玩具を創り、多くの人に喜びを与える。そしてそれは人に対してだけでなく、それを創る人にも喜びを与えているのではないでしょうか。もちろん創造には生みの苦しみもありましょう。でも、制作中に作品のアイデア・素材・技術などとの対話などを通して、作者の心の中に残ったものも大きいのではないかと想像しています。
今年もこの丹波年輪の里に101名による114点の作品が集まりました。それぞれの作品に、出来上がるまでの想いが詰まっています。コンクールという場である以上、作品の優劣を競わなければなりませんが、一方では「創る」意義を共有する仲間でもあります。来年は、さらにこの仲間が増えることを期待しています。
兵庫教育大学名誉教授 日野 永一
グランプリ
作品名 / 台所の風景-くつろぎの場所-
氏名 / 宮﨑 昌洋(茨城県)
使用樹種 / ヒノキ、ブナ、カエデ、ブビンガ
【作者コメント】
洗い台のふたはまないたへ、ガス台の四角い部分の中心の穴に指を入れて引っ繰り返すと火力台と平面の選択が出来、卓上火力器として使うことも、左右にある半円木部は火力調整用として回せます。
円卓の各丸足は回すと取り外しが出来ます。
食木や調理木具類は各台の開き扉を開けて収納出来る。小座布団は手すきで作った三重和紙を使い羊の原毛を詰めて製作。
【講評】
子どもが集まる場所、保育園や幼稚園に、流し台などのある、このキッチンがあったら、子どもたちは喜ぶだろうなと先ず思った。お鍋のセットやお皿などもそろっている。大人の真似をして料理を作るごっこ遊びは、幼少期に欠かせないが、一般の家庭では場所を取りそう。これほど大きなセッティングをするには、大きな子供部屋が必要だ。
全体に明るい色の木材、ヒノキ、カエデ、ブナなどを使い、モノトーンにまとめている。何といっても工作技術が優れ、安心感がある。
現在の家庭のキッチンはテーブルに椅子が多いが、座卓なのがご愛嬌である。椅子にしたら、本展の規格基準をオーバーしてしまう。ぎりぎりの基準内で収めたようだ。
作品説明にあるように、洗い台やガス台には細かな配慮が施され、作者は50才を過ぎて、幼い子どもに戻って、くつろぎの場を作った。
ペアの小座布団に羊の原毛を詰めるとは、遊び心もきわまっている。このピンクとみどりの二つの配色があって、何か救われたような気もする。
子どもの遊ぶキッチンに、どんな配色を考えるべきかが、今後の課題となるだろう。
組み木デザイナー 小黒 三郎
準グランプリ
作品名 / クマさんとパンのドミノたおし
氏名 / 河邊 明(茨城県)
使用樹種 / ブナ、ウォールナット、モアビ、チーク他
【作者コメント】
家族みんなで楽しめるように、可愛くて、コミカルで、メカニカルな作品を目指しました。
軽く動かすため、耐久性、強度をもたせるためにプラスチック製のベルトと軸受けを使用していますが、歯車、プーリーやカムは全てブナや黒檀などの木製です。
【講評】
アイデアがすばらしく、子どもから大人まで楽しめる、とにかく楽しい作品です。
惜しくもグランプリは逃しましたが、動作が確実で、複雑なメカニズムの強度も充分考えられています。
熊や食パン、ポットやカップなどのデザインの完成度も非常に高く、見所が多い作品です。パンのドミノが倒れた後の立ち上がりは感動的です。
工作精度は高く、アナログ的機構と最新のコンピュータ技術を融合させたような、他者の追従を許さないジャンルの作品と言えるでしょう。
名古屋女子大学教授 渋谷 寿
優秀賞
丹波市長賞 ウマになった三輪車 大森 恵(兵庫県)
丹波市議会議長賞 ポンポコ狸 白木 操(兵庫県)
丹波市教育長賞 Moccar(モッカー) 丹野 雅景・ゆり(北海道)
新人賞
(公財)兵庫丹波の森協会理事長賞 あそぶ×かたづける 内藤 憲之(北海道)
特別賞
三木工業協同組合理事長賞 鳥・トリ・モビール 堀田 幸生(高知県)
佳作
丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞 スパイダー 関 哲也(長野県)
丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 ころころドレミ 大森 栄司(兵庫県)
丹波の森ウッドクラフト展 実行委員長賞 逆立ちごっこと回りっこ 小原 孝志(兵庫県)
学生賞
丹波市製材協会賞 コロコログルグルニャー 厚地 紗有加(愛知県立名古屋聾学校 産業工芸科)
出展作品数は114点(内テーマ作品数は75点)、出展数は101名
審査員
【審査委員長】 小黒 三郎 組み木デザイナー
渋谷 寿 名古屋女子大学教授
日野 永一 兵庫教育大学名誉教授