第33回受賞作品 [一般の部]

審査総評

 今回のウッドクラフト公募展は、コロナ禍故に1年間のブランク後の再開で、新たな転換の契機となる記念すべき作品展になりました。コロナの影響がどのように出るか心配していましたが、十分吟味された完成度の高い作品が多く、ウッドクラフトの可能性の高さを感じることができました。
作品総数は前回よりやや減少しましたが、シニア層の頑張り・熟練の高度な技に支えられた出品数は増加しており目を引きました。出品作品の総合的なレベルは今まで以上に高度になった感がありますが、大きく分けると、一方は、突き詰められた構造の精緻さと複雑さを融合させた完成度の高さが際立つ作品、もう一方は、素朴で、おおらかで、ユーモアが溢れ、楽しさ満載の作品です。今後は若い方々も、フレッシュな若々しい感性を発揮された上で、構造の強度や美しさなども併せ持つ作品を目指していただきたいと思っています。
次回のテーマは「振動」です。転換後の、新たな「振動」はどのような形で表現されるのか期待が膨みます。

名古屋女子大学教授 渋谷 寿

グランプリ
001

作品名 / トンボの機巧-みなもに描かれる波の紋-
氏名 / 山上 哲(山梨県上野原市)
使用樹種 / ブナ、ココボロ、チーク、ウエンジ、カリン、竹、ブビンガ、ウォールナット、ボコーテ、ナラ

【作者コメント】
 とんぼが卵を産み落とすときに起きる水面の水紋を機巧で創りたいとおもい制作しました。 ハンドルの回転は3分岐し、1ルート目はとんぼの翅(はね)の動き(翅を前後交互に上げ下げします)。
2ルート目はとんぼの上昇下降の動き(欠歯歯車による間欠の動きにより最高上昇時、一定時間停止します。)
3ルート目は水紋の波の動きを制御し、やはり欠歯歯車により波が消える時間をつくり出しています。

【講評】
 自然をよく観察し生命のほとばしりを感じさせる。トンボの微小な動きと時間の経過を表現している機構の組み合わせが見事で、なめらかな動きから歯車の制作や調整に手間と時間をかけたと想像できる。
特にすごいと感じたところは翅の動かし方、細い真鍮パイプの中を、たぶん金属の極細のロッドを回転さえ、胴体に仕組まれた木の部品に接続し翅を動かしているのだろう。水紋の動きを演出する構造も巧みで絶賛。

プロダクトデザイナー 中井 秀樹

準グランプリ

作品名 / 飛行船
氏名 / 大森 栄司(兵庫県丹波市)
使用樹種 / メープル、ウォールナット、他

【作者コメント】
 さあ!!しゅっぱつだ~
子どもがカラクリや工作が好きなので、仕掛けを考え、子どもと作っては動かし、学んで遊びながら作りました。

【講評】
 とにかく楽しさ、ファンタジー満載の物語性のある作品です。様々なキャラクターが飛行船を動かしている姿はユーモラスであり個性的です。この作品の構造的な素晴らしさは、飛行船を操作している様々なキャラクターの動きをモーターで動かしていることです。おそらく細い電線が、飛行船を支えるパイプの中を通っていると思われますが、複雑な動きを生み出している工作は見事です。
また、この作品からは、作りながら考え作るという、ウッドクラフトを愉しむ姿が目に浮かびます。

名古屋女子大学教授 渋谷 寿

優秀賞

  丹波市長賞  小さな虫達の木の葉運動会  津田 敏幸(兵庫県加古川市)

  丹波市議会議長賞  変身トコトコ  村井 中(埼玉県所沢市)

  丹波市教育長賞  団子虫の行列  山根 亮二(兵庫県朝来市)

新人賞

  (公財)兵庫丹波の森協会理事長賞  森のキノコの舞踏会PARTⅢ  藤田 淳(兵庫県丹波市)

特別賞

  三木工業協同組合理事長賞  これが木の色、木の形(ケーキ3点組)  熊野 聡(宮城県仙台市)

佳作

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  海のなかまたち  大森 恵(兵庫県丹波市)

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  ころがれ どうぶつの森  藤澤 千夏(東京都 学校法人中央工学校)

  丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞  無限連射  小川 ゆうじ(大阪府富田林)

学生賞

  丹波市製材協会賞  バナナバランス  戸河 壮太(金沢科学技術大学校 家具クラフト学科)


出展作品数は74点(内テーマ作品数は30点)、出展者数は69名


審査員

  渋谷 寿(審査委員長 / 名古屋女子大学教授)
  中井 秀樹(プロダクトデザイナー)
  尾﨑 織女(日本玩具博物館学芸員)