第34回受賞作品 [一般の部]
審査総評
「百聞は一見にしかず」事前資料では予想できない驚きが、実際の作品を目の前にするとある。なぜか今回は特にそう感じた。
例年に比べテーマ作品の出品が少なかったが、いつも通りの力作揃いで手が込んだものが多かった。びっくりするほど緻密に作り上げている作品やシンプルだけど制作を楽しんでいる様子が伝わってくるもの、そして造形的にユニークな作品などバラエティ豊かな回になった。中には商品化が可能と思わせるような作品もあった。特にテーマ作品に高レベルなものが多かったという印象だ。歯車やカムなどの基本機構、スプリング、磁石、テグスなど複雑な機構を仕込んだものなど動きを確かめながら作り上げている様子が伺える。
審査ではシンプルで遊び方が解りやすい作品が賞の対象になった。
学生の作品は新規提案のものが少なかったもの自分の思いをいかに具現化するか?という挑戦意欲が感じられた。経験が将来のグランプリ候補を生み出す、是非提案し続けてほしい。
プロダクトデザイナー 中井 秀樹
グランプリ
文部科学大臣賞
作品名 / こづけばピピピッ!!
氏名 / 大森 恵(兵庫県丹波市)
使用樹種 / ヒノキ、タモ他
【作者コメント】
ひよこたちが親どりの周りで楽しそうにエサを食べています。たまにエサがとび出したり、お母さんどりのお腹の下には・・・!!
上下、左右に不規則にゆれ動く振動のしかけで動いています。
【講評】
なんとも可愛らしい作品です。ハンドルを回すと、鶏の親子が賑やかに動きまわり、遊び手は幸せな気分に包まれます。家族を守る父鳥、抱卵中の母鳥、餌をついばむひよこたち…。上下左右の反復、回転、開閉など、一体ごとに異なる複雑な動きを滑らかにつなぐ舞台裏のメカニズムが見事です。
どの個体も木の特性を生かしたまろやかな造形で、隅々に遊び手への愛情が感じられます。母鳥の造形に雌鶏らしさが加われば、作品の放つ生命感がさらに深まりそうです。
日本玩具博物館学芸員 尾﨑 織女
準グランプリ
兵庫県知事賞
作品名 / あー しんどう
氏名 / 松澤 政彦(大阪府富田林市)
使用樹種 / スギ、ヒノキ、チーク、カリン他
【作者コメント】
右側にあるハンドルを時計回りに回して下さい。ゆっくり回して下さい。
皆さんハンドルを回してお楽しみ下さい。
キツツキの動きと音がします。NHKの朝ドラ「ちむどんどん」で沖縄の島ヤンバルでキツツキの木をつつく音が聞こえますね。
【講評】
長年、いつも素朴で暖かい作品を出品されている作家のこの作品は、クランクを回すと歯車の連動で木槌が上下し竹筒を打ち、迫力ある音の振動が耳に伝わり、リンクで結ばれた先にはキツツキが樹木に向かって楽しそうに動いている。
作品の完成度は高く、シンプルで解りやすい機構部の動きも作品の醍醐味を醸し出している。「あー!しんど」と呟きながらも制作しているワクワク感が伝わってくる。一つ加えるならば、竹筒の音とキツツキが木をこずく動きが同期するように調整してほしい。
プロダクトデザイナー 中井 秀樹
優秀賞
丹波市長賞 午前0時の玩具 松本 昌 (山梨県北杜市)
丹波市議会議長賞 ゆっくり・パクッ 大森 栄司 (兵庫県丹波市)
丹波市教育長賞 ロデオ 久保 進 (神奈川県伊勢原市)
新人賞
(公財)兵庫丹波の森協会理事長賞 木製立体パズル チンアナゴ三兄弟 -ワカメ(大)・コンブ(中)・メカブ(小)-
髙橋 慧、横田 咲樹、馬場 日彩 (岡山県岡山市)
特別賞
三木工業協同組合理事長賞 たれこうべ 関 哲也 (長野県北佐久郡軽井沢町)
佳作
丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞賞 ひれウェーブ 村井 中 (埼玉県所沢市)
丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞 クマゲラ 五十嵐 光也 (北海道札幌市)
丹波の森ウッドクラフト展実行委員長賞 こっち、こっち! 蓮溪 円誠 (滋賀県長浜市)
佳作
丹波市製材協会賞 きのこのつみき 早坂 灯子 (京都芸術大学)
出展作品数は67点(内テーマ作品数は22点)、出展者数は60名
審査員
渋谷 寿(審査委員長 / 名古屋女子大学教授)
中井 秀樹(プロダクトデザイナー)
尾﨑 織女(日本玩具博物館学芸員)